りんかーんがっこう
「おっ!きたきた!二人共遅いぞー!」
朝からあんなに声張って元気にブンブン手を振れるなんて……流石元気の塊、我らでは適わないな。
「かなちーが早すぎるんだよー。ねーちよちー」
「うんうん、私達も十分前なんだからそこまで遅くないもん。叶奈ちゃんが早すぎるだけー」
「ふふん♪なんせ今日はりんかーんがっこうだからな!」
叶奈ちゃん、それはアメリカの初代大統領の名前やで……というかその学校すごい沢山大統領排出してそう。
そんな下らない事を思いながら、一緒に到着した綺月ちゃんと共に、長袖の上着にジーパンという格好ながら涼し気なデザインの洋服に身を包んだ俺は叶奈ちゃんの元へと向かう。
「長袖に長ズボン?ちよよん暑くないのか?」
「あ、私もそれ思ってたー。半袖で来たらよかったのにー」
「ふっふっふっ、実はこれ生地が薄いからか充分涼しいんだー。それに行く場所は山の中だからね、怪我したり虫に刺されないようにーって母様が着させてくれたんだよー」
まぁ流石に中は半袖だから暑かったら脱げばいいしね。色々気を使ってくれるなんて、ほんと母様様だ。
それにかっこいいしな!
「「へー」」
「でもちよよんに似合ってるぞ!なんかしゅっ!ってしててかっこいい!」
お!流石元気の子叶奈ちゃん、わかってくれるじゃないの。
「そうかなー?確かにかっこいい感じでちよちーに似合ってると思うけど……私はもっとこう、朝露に濡れた百合の花?みたいな可憐な感じ?」
「お、おう……」
よくわかんないけどなんか分かるような気がしなくもない……
「でも残念だなー」
「ん?何が?」
「あれ?一番ちよちーが気にしてると思ったんだけど」
俺が?なんかあったかなぁ……
むむっと首を捻り、二人が残念がっている事を思い浮かべようと俺がしていると、二人は大きくため息をついて俺に説明し始める。
「れーたろのことだぞちよよん」
礼二の事?
「そうだよちよちー、組が違うかられーくんと林間学校行く日違うじゃない」
あー、そういやそうだったなぁ。
そう、実はうちの学校は一学年二クラスであり、クラスが違う為俺と礼二は一緒に林間学校に行く事が出来ないのだ。
「うーん、確かに礼二と一緒じゃないのは少し寂しいけど、そこまで気にする程じゃないしなぁ……」
「「はぁー」」
「えぇっ!?私何か変な事言った!?」
「別にー」
「ちょっとれーたろーが可哀想とは思うがなー」
えぇ……なんだよそれ…………っと、そろそろかな?
「と、とりあえず二人共ー、そろそろ行くよー」
「あ、ちよちー話そらしたー」
「そらしたー」
「うるさーい、ほら行くよ!」
「「はーい」」
二人と話している内に結構時間が経ってしまったのか、ガヤガヤと周囲が騒がしくなり始めたのを感じた俺は、二人にそう言いリュックに手を添え歩き始めたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「この階段を上がったら到着でーす。皆さん頑張ってくださいねー」
お、やっと到着か。地味ーに距離あって子供の体じゃキツかったが、まぁ俺は中身大人だしな、我慢出来る分問題はないんだけども……
「やっと到着だー。流石に……叶奈も……疲れたぞー」
「私もーむりー、階段登るのやだぁー」
「ほら二人共頑張れー、あと少しあと少しー」
学校に集まってから二時間、バスに揺らされ山奥へとやって来た俺達は山道の急な斜面と幾つもの階段と戦い、ようやく林間学校の行われる場所へとたどり着こうとしていた。
「ちよよん元気だ……一緒に歩いてたはずなのに……」
「ふふん♪毎日足腰鍛えてますから♪」
これくらいなら少し疲れるくらいなのですよお二人さん!
「なんか知らないけどちよちーずるいー、手ー引っ張ってー」
「叶奈もー」
「はいはい、仕方ないなぁ二人共。それじゃあ行くよー?せーのっ!」
「「「とうちゃーく!」」」
「おぉー!お話に出てきそうー!」
「ここで今日と明日過ごすのか!わくわくするな!」
「だね!これはすごく楽しみだ!」
そう興奮した様にようやく階段を登り終え辿り着いた俺達の前には、木々に被われた山中で突如現れた木々の開けた場所に立っている立派な丸太作りのログハウスがあった。
そして────
今日と明日ここで色々な経験をして過ごす……!くぅー!凄く楽しみだ!
俺はそんな家を前に、この二日間で起こるであろう様々な楽しい出来事に胸を踊らせるのであった。
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