小さな二人の秘密の道
「それじゃあ」
「またねー」
「さよならだぞ!」
ブンブンと元気に手を振る叶奈ちゃんとひらひらと可愛らしく手を振る綺月ちゃんに別れを告げ、さてとと切り替える様に言って、俺は待たせていた礼二と合流する。
「お待たせー」
「ん、大丈夫。だけど……」
「ん?」
「なんで女子ってそんなに話長いんだ?」
それほんと思う。なんで女子ってたったあれだけの話題であそこまで話出来るんだろうな。
「うーむ、女の子は謎だ」
「いやお前も女子だろ」
「そういやそうだった」
なんだか礼二と居ると妙に落ち着いて本音が出ちゃうんだよなぁ……こう、まさに実家にいるような、そんな感じの安心感。
「そういやって……いやでも、俺はそんな千代もす、好き……だけど」
「お、嬉しいこと言ってくれるじゃないかー。ありがとね、礼二」
「う、うん」
んー、この子犬感、可愛いなぁ。
のんびりとそんな事を考えながら礼二の頭をよしよしと俺が撫でていると、何かを思い出したように礼二があっと声を上げる。
「そういや千代ちゃん、俺らの家庭訪問いつだっけ?」
家庭訪問?あーなんか先々週くらいに先生がそんな事言ってたな、えーっと確か俺達の地区の方は……
「今月の二十四……って今日じゃん!」
やばい!礼二の頭を撫でてる時間なかった!
「本当に!?急いで帰らないと!」
「う、うん!」
えっと確かここからなら……
「礼二こっち!」
「えっ千代ちゃん!?」
「いーからはやく!」
俺はそう言うと礼二の手をぎゅっと握り、近くの生垣に飛び込んでガサガサと掻き分けながら、俺と礼二の家の間の生垣まで繋がっているその隠し通路で向かう。
「ここ、久しぶりに使ったね」
「そういやそうだね。前使った時って四歳とかだったっけ」
「千代ちゃんよく覚えてるな……」
「まぁねー。にしても、全然使わなかったからか生垣の枝が凄く伸びちゃってるね。あーもう、スカートとか髪の毛引っかかるー」
こりゃ間に合っても母様に怒られそうだー。
「……ねぇ、千代ちゃん」
「んー?」
「俺、千代ちゃんの事が、す、す────」
「みゃー」
「あ、にゃんこー」
礼二が何か言おうとした所でこの隠し通路に住んでるのだろうか、ガサガサと茂みから出てきた茶色の猫を見つけた俺はそっちに気を取られてしまう。
「よーしよしよし。ここに住んでるのかな?」
「みゃん」
お、擦り寄ってきた。かわいいなぁ〜。
「ふふふっ、懐いてくれたのかな?それで礼二、何か言おうとした?」
「い、いや……なにも」
「そう?んじゃあそろそろいこっか。にゃんこまたねー」
「みゃうん」
「可愛かったねー」
やっぱり犬もいいけど猫もいいよねー、こう犬みたいに「遊んでーっ!」って感じじゃなくて、すりすり甘えてくるみたいなのが。
「そうだな。ま、まぁ?俺としてはやっぱり────」
「あっ!こんな事してる場合じゃなかった!急ごう礼二!」
「なんというか……千代ちゃんってだいぶ自分調子だよな……」
「そう?」
そんな事ないと思うけどなぁー。
そんな風に思いながら、俺は礼二の手を引っ張り隠し通路をかけていくのだった。
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