昭和TS転生譚〜過去の世界で夢を叶える〜
こたつ
プロローグ・はじまりはじまり
「お姉ちゃんこれくださーい!」
「はーい、お母さんのお使いかなー?」
「うん!お釣りでお菓子も買っていいって言われてるんだよ!」
「あらそうなの。それじゃあはいお釣り、お菓子選んでおいでー」
「ありがとうお姉ちゃん!お菓子お菓子ー!」
渡したお釣りを握りしめ、ガヤガヤと賑やかな駄菓子コーナーへと向かうその少女を「俺」が微笑ましげに眺めていると、不意にぽんと肩を叩かれる。
「あ、お姉ちゃん、今日は早いね。こんな時間にいきなり肩を叩かれたもんだからてっきりお巡りさんかと」
「学校が冬休みだから今日の仕事が昼までだったのよ、たまには教師もいい事あるものね。それよりお巡りさんって、何かやったの?」
「んーん、何も」
少なくとも「今の時代」なら手を出さない限り問題にならないし、それに今の俺は……
そこまで考えると、俺はちらりと今居る畳の上にあるレジの置かれた机の隅に設置された、手鏡よりも少し大きめの鏡を見る。
真珠のような白い肌、濡羽色とでも言うべき艶のある黒い長髪、おっとりとした優しげで大人しそうな印象を与えるタレ目と丸っこい眉。
そしてすっきりとした鼻とその下にある桜色の小さな可愛らしい口の、一言で言うなら絶世の美女がその鏡には映り込んでおり、その絶世の美女は「俺の意思」で苦笑いを浮かべる。
女だからどれだけ小さい子を愛でても犯罪にはならぬのだよ。
「今なんか悪い顔してたわね」
「そんな事ないよお姉ちゃん。それより何か用でも?」
「うん、もうそろそろ誕生日でしょ?だから何か欲しいものでもないかなぁって」
あぁ、そういう。となるといよいよこの体ももう20かぁ、あと数年で前世の俺と並ぶな。
ふっと遠い目になった俺の視線の先にはカレンダーがあり、そこには1980年と実に前世の俺が産まれる「約30年前」の年が書いてあった。
「まぁおいおい考えとくよ、とりあえず今は────────」
「お姉ちゃん紙芝居の時間なったよ!」
「紙芝居!紙芝居!」
「おばちゃん紙芝居はやくー!」
「お菓子買ったよー!」
「紙芝居やってあげなくちゃね……って誰がおばちゃんよ!まだ私はピチピチの19歳だっていうの!全くもう……はい、それじゃあ皆こっちにおいでー」
「「「「「「はーい!」」」」」」
少し長くなったが、これはある1人の令和生まれの男が昭和の時代に新たに女としての生を受けたという、TS転生タイムスリップした男の物語である。
それでは──────────
「はじまりはじまり」
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