第10話 隠蔽は、真実を恐れて邪魔をする

 パンデミックや暴動が起これば、必ず流れる陰謀説。

 5G導入による情報管理戦争。忠酷vsアメリカ。主要なIT部門の特許で圧勝する中酷。アメリカは中酷主導のファーフェイへの参入・拡大を阻止するためイギリス(UK)、イスラエル、日本などと連合を組み、ファーフェイ排除を打ち出していた。その一角のイギリス(UK)が切り崩された。アメリカの焦りと怒り。中酷は好機を活かす、その裏で発生した中酷での新型コロナウイルス、アメリカでのインフルエンザ。いずれも拡散の速さは自然発生にしては考え憎い。そこで浮上したのが生物化学兵器戦争。1月28日、ハーバード大学の生物学部長のチャールズ・リーバー教授でありながら、武漢理工大学の戦略科学者でもあり、中酷軍のスパイとなり生物兵器などの情報横流しをした疑いで逮捕される。

 ムハメドは面白い記載を見つけた。アメリカのゼロヘッジのニュースだ。

曰く、陰謀論、偽情報。悪い噂はあるが、興味は唆る。そこには、武漢ウイルス学研究所の中酷人科学者を特定し、その論文があると言う。その記事の内容は、ウイルスを感染させたコウモリが、病気を発症することなく、体内に長期間保存できる方法を分子構造から研究する、というものだった。研究の中心人物は中酷科学院に属する武漢ウイルス学研究所の周鵬。行っていたのは、自然免疫の経路に耐性がないスーパー病原体の研究だった。その研究は一般の疫学的研究ではないのは明らかだった。2019年11月中旬の時点で、周氏の研究所はスーパーコロナウイルスとコウモリの感染症に関する研究実施を支援するため、経験のない研究者たちを積極的に採用していた。その資金援助は国立優秀青年基金、中酷科学院、科学技術省の主要プロジェクトから受けている。人間がその病原体に免疫を獲得する方法を研究するのが疫学的研究だが、周氏が行っていたのは、その逆の治りにくくする、免疫のメカニズムを改変する、とあった。つまり生物兵器としてのコロナウイルスの作成が目的であった、としている。さらに生物兵器を開発する場合、同時にウイルスや治療薬の開発もするはずだがそれがなされていない、「天につばを吐く」の如く、自爆兵器となったのではと締めくくっている。


 同じ頃、インド工科大の研究チームが新型コロナウイルスのDNAを分析した結果、HIVのDNAが組み込まれているとの論文を発表。この配信はbioRxivであり、運営元がCSH(Cold Spring Harbor Laboratory)だった。

 CSHはアメリカ合衆国ニューヨーク州ロングアイランドにある民間非営利財団による研究所で、生物学・医学の研究および教育を目的としている。最先端の研究で世界的に知られ、ノーベル賞受賞者も輩出している。

 中立的な立場の研究所からの論文は、疑念を真実味のあるもへと変貌させた。そこで注目されたのは、2019 nCoVが他のコロナウイルスに存在しない4つのインサートアミノ酸残基が認められたことだ。この4つのアミノ酸残基が交じり合うことは自然界では有り得ず、人工合成されたものであることを否定できない。その論文に対するバイオテクノロジーが盛んなカナダ、オーストラリアなど各研究者のコメントは批判的だった。それが真実味を濃厚にする。支配層系科学者に取れば、先を越された、と言うことになり、捏造や金、政治で動かされる者達にとっては認められないもの。裏を返せば、反響があるほど真実崩しに躍起になっていると読み取れるものだった。

 更に疑いに拍車を掛けたのは中酷当局が、コロナウイルスのゲノム解析を終え、抗ウイルス薬の臨床実験に取り掛かっていると言う。速すぎる。世界中の医療機関が手を焼いていると言うのに。問題を自分で作り、答えを出すようなもの。予め新型コロナウイルスのデータを持っていたと考えるのがいいだろう。でも、焦ったな、中酷。悪党から英雄への転身を狙ったか。やり方が単純、露骨すぎる。

 エドワードが面白い記事も入れておいたよ、と言ったのは、アメリカに亡命した中酷の実業家・投資家の郭文貴の記事だった。その記事には、2020年2月3日、中酷共産党の公式軍事ポータルサイト「西陸網」には、武漢の新型コロナウイルスがコウモリウイルスによる自然突然変異は不可能だ。人工的に合成されたことものだと主張。最高権力機関である中央軍事委員会のウエブサイト「西陸網」で発表される情報は、最高位層の肯定を得たものだからだ。その「西陸網」は2020年1月26日には、武漢ウイルスの4つの主要蛋白質が交換され、中酷人を正確に狙い撃ちできるというものだと発表している。更に不可解なことに4つの主要蛋白質が交換された理由が記されている。SARSウイルスに偽装し、医療関係者を欺くことで、治療の時間を遅らせること。人への感染が力が強力であるため急速に蔓延させ、伝染させられること、が目的だと。

 なぜ、この時点で最高機関がウイルスの特長を述べられるのか、知っていて何故、対策に講じていないのか、賢者を演じたかったのか。結果として、第三者がこれを見れば、武漢ウイルスは実験室が製造と生産に関与していると思われても仕方がないではないか。更に更にだ、自分たちの失態から人民の目を逸らさせる為、敵を作り、人民の怒りの矛先を変えるいつものやり方が発動するではないか。その矛先はアメリカに向けられた。SARSから武漢新型肺炎まで、アメリカの人種絶滅計画を見る、と言う小見出しで始まる記事だ。その内容は、アメリカが生物兵器を製造し、中酷人を攻撃できるようになったと避難している。続けて、中酷人を選んで殺している。その証が死んだ96%が中酷人だ、この武漢ウイルスは生物戦だと、人民を誘導している。人民だけでなく共産党は既にメディアの中で買収・浸透している。フェイクニュースもそのひとつだ。

 アメリカは、いち早く中酷人の入国を禁止。中酷から帰国させる自国民は米軍基地で隔離・管理し、動向を見守り、本土国民を徹底的に守る政策を取った。他国の対応同じようなものだ。なのに、今いる日本は、今だに中酷人の行き来に寛容だ。メディアだけでなく政治家にも共産党の買収・浸透が功を奏しているのではと、ムハメドは日本に対して不信感・不安を抱くようになっていた。危機管理と人権。しかし、日本には、命あっての物種命というのがあるではないか、非道と呼ばれようと毅然とした対応をとってこその危機管理ではないか、踏み切れない政治家への不甲斐なさも感じ得ずを得なかった。

 民衆の立場に立たず、真実を捏造し、共産党の思惑に誘導しいている。武漢の疫病発生の責任をアメリカに転嫁し、中酷共産党は14億人を煽動し、アメリカに戦争を仕掛けている。ウイルスに対しての政府への怒りをアメリカに徹底的にむけさせるプロパガンダを仕掛けている、と。

 荒唐無稽、ムハメドは笑えなかった。政府の失態は、敵国に向けたプロパガンダで切り抜ける。隣国にも似たような政策をとる国があるが、臭いものに蓋をして得る利益は、根本の問題に目を伏せているだけじゃないか、と虚しささへ感じてしまう。どの国も似たようなものか…。ムハメドは目を閉じ、虚無感に押しつぶされそうになっていた。

 

 不可解なことが重なる。中酷の失態をあれ程、目の敵にしているアメリカのカード大統領が見逃すはずがない。しかし、自国のインフルエンザ、自身の再任のことがあったとしても静かすぎる点だ。それは、新型コロナウイルスがアメリカのハーバード大学のチャールズ・リーバー教授らから中酷軍の欧米各国へのスパイ活動で生まれたものであれば、殺人ウイルスを開発したのアメリカである可能性が浮上する。そのウイルスを武漢のラボで手を加えた。それをずさんな管理で垂れ流した。盗んだ中酷、開発したアメリカともに公にできない事情が絡み合い、対岸の火事として扱っているのではないかと。そう、新型コロナウイルスの起源はコウモリなどの自然界の動物由来のウイルスにしたい、それが本音だろう、とムハメドには思えてきた。

 ムハメドは、分子生物学の専門書を数冊、エドワードに依頼した。専門書を手に入れたムハメドは寝食を忘れて読み漁った。ムハメドは元々、医師を目指しアメリカのジョン・ホプキンス大学に入学したが、金銭的事情から道を踏み外し、気が付けば、モサドの一員となった逸材だった。患者の症状から出した結論は、風邪のウイルスにHIVやエボラ、マイコプラズマバクテリアなどをハイブリッドしたウイルス兵器だった。

 フェイクニュースも多々あった。高層の住居から拘束しにきた警察から逃れるためベランダから落下する衝撃な映像。しかし、それは仲違いから興奮した住人がべランドを乗り越え落ちた事故では。拘束に来た警官と事故を繋ぎ合わせたものではと疑って見ていた。また、下級職員の買収と言うものもあったがそれは違うと思った。それが可能であれば、潜入していた自分が任務遂行に苦慮などしない。実際、上級人民と下級人民の隔たりは大きく、蔑む視線は、嫌と言うほど浴びていた。そもそも、管理がずさんとは言え、実験室などの主要な場所には立ち入れなかったからだ。

 それよりも、ムハメドが気になったのは、感染の速度の速さだった。そこには、感染者したスーパー・スプレッダーの存在だった。自慢の家庭料理を持ち寄り皆で食べる春節を祝う伝統行事「万家宴」が2020年1月18日に行われた。今年は4万世帯が参加した。蔓延の引き金を引くのに十分な環境だった。この時、武漢市は41人の感染を発表。「人-人」感染の恐れは排除できないとしていた時期だった。上海市人民政府は感染ルートを直接感染、接触を通じた感染、そしてエアロゾル感染に注意喚起を促した。エアロゾル感染は空気感染とは違う。飛沫感染の延長だとムハメドは考えていた。空気感染なら研究所や職員その家族、その周囲に広がっていても可笑しくない。現に自分は濃厚接触の可能性があるのに今だに発症していない。保菌者かも知れないが。この段階では、マスク、手洗い、うがい、アルコール消毒を心掛ける。後は、重篤な感染に高齢者や疾病持ちが多い点から、免疫力を強めれば、ある程度は防げるのではないかと推察していた。幸い米軍の出してくれる食事は栄養価が計算されたものだと思えた。あとは、体力か。そう、思ったムハメドはストレッチで汗を搔くことに時間を割くことにした。

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