暴走JK×つちくれガール
たまわり小毬
プロローグ ぬるま湯のゴーレム
私はゴーレム。カラダは
お風呂場の鏡と向かい合う。私のカラダは小学生程度と小さいけれど、土をかためて作られたとは思えないほど人間らしい。
虚像の自分とにらめっこすると、瞳は澄んだ水面のようにお互いの姿を映しだした。
裸のまま、もう五分もそうして突っ立っている。寒くなってきたからそろそろシャワーでも浴びて温まろうかな、と思いはじめたところで。
「はーい、美咲おまたせっ。じゃ早速始めようか」
ゆるい感じの高校生、クルミさんがお風呂場に入ってきた。
彼女が持ってきたのは、私の身体を改造する品々。ゴーレムの身体は見た目かなり人間らしいけど、実のところまだまだ不完全だった。
色々と足りないから、色々と混ぜて、組み上げ、完成させなくちゃいけない。
「うーん……クルミさん、これ全部混ぜるんですか?」
「えー? 変なのは選んでないけどなぁ」
クルミさんが持ち込んだ材料をあらためる。
土は、もともと私のカラダを作る大事なものなので、手入れに必要だからいい。
でも。
「この、生肉とか野菜はなんですか。鍋でもするつもりですか」
「人間に限らずだけど、カラダは食事によって作られるもんだよ。いーっぱい混ぜれば、人体に近づく! 間違いないね!」
「うーん……」
栄養はそりゃ必要だと思うけど……腑に落ちない。それは普通に食事してもよさそうだし。腑に落ちないけど、だからって他になにを混ぜたらいいのか分かんない。土でできたカラダを人間にするのって、なにを混ぜたらいいんだろう?
「まぁ、どうせ作り直せるならいいです。それじゃクルミさん、お願いしますね」
「まかせといてー。ニシシ」
クルミさんがいたずらっぽく笑う。普段の凛々しさと違ったあどけなさを見ることは好きだったけど、でも今そんな表情されると不安しかない。
それでも、この身体をちゃんと人間にするには、このなんちゃって錬成を繰り返さなくちゃいけない。
もうどうにでもなれ。と半ば開き直って、バスタブを満たすお湯へと潜り込んだ。
裸でしばらく待っていたせいですっかり冷たくなっていた肌が、湯船によってポワポワと温まる。ビー玉で作られた瞳はガラスのような働きをして、水中をクリアに見せてくれた。
クルミさんが、ゴーレムの錬成に必要な『賢者の石』をバスタブの中へと投げ込んだ。水面に波紋が広がり、同時に淡い青や赤の光が石から放出されて、お湯の中を満たしていく。
私の意識は、その淡い光の中へと溶け込むように薄らいで、自然とまぶたが閉じられていく。
クルミさんの手によって、土とか、いろんな食材がドポドポと投げ込まれた。
次々と降り落ちるそれらを眺めながら、意識が消える、その直前。
なぜか、材料の中に『猫耳カチューシャ』が混ざっているのを見つけてしまった。
***
錬成が終わり、お風呂から上がったあともしばらく不満はおさまらなかった。
クルミさんは私をソファーに座らせ、バスタブで濡れた頭をタオルでフキフキと乾かしている。
「クルミさん……あなたはまた。今度はなにをしたんですか」
「ゴメンゴメン! どうしても見てみたくてさぁ。でもカワイイよ?」
「カワイイとかじゃなくて――勝手に姉さん好みに改造されたら、困るんですよ!」
思わず怒鳴った。その勢いに押され、髪を拭いてた手がどかされた時――。
タオルのずり落ちた頭から、ネコ耳がピョコンと立ち上がった。
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