第77話 憂鬱、繰り返す1歩
朝起きて身支度を終え、出発する前に鏡に映った自分に問いかける。
「はぁ……。どうしたらいいんだろ」
今日は紫音によって強制的に決められた白太先輩と遊びに行く日。
だが、私はこの遊びに行くかどうかを悩んでいた。
この遊びはデートでもなんでもなく、あくまで私と白太先輩の現状の関係を改善させるためのものなので、そう考えれば全く抵抗はない。
しかし、私の心はそう思っていないようで、以前白太先輩とデートに行っていた時の様に胸が躍っている。
緑川先輩と白太先輩は両思いになったのだから、もう白太先輩を好きでいてはいけない、早く忘れなければならない、そう思えば思うほど白太先輩に対する気持ちは大きくなっていった。
気持ちを抑えるため、学校では出来るだけ冷たく接する様にしている。
そうしないと自分の気持ちが収まらないだけでなく、白太先輩にも迷惑をかけてしまう。
でも、それが原因で私と白太先輩だけでなく部活動の雰囲気を壊してしまっているとなると、これからも今と同じように振る舞うわけには行かない。
雰囲気を悪くしない為にも、早くこの関係にケリを付けるべきだと言う事は分かっている。
それなのに、私は仮の関係を終わらせることが出来ずにいる。
仮の関係は終わりです。別れましょう。
そう言うだけなのに、その言葉が喉を通り越してくれないのだ。
白太先輩からも、私たちの仮の関係について言及する言葉は無いし、私も白太先輩も何考えてるんだか……。
そんな考えが頭の中をループしているうちに、私は白太先輩との待ち合わせ場所に30分も早く到着してしまった。
頭で考えている事と行動が180度異なっている。そんな自分に ため息が出る。
そして白太先輩との待ち合わせ場所に近づくと、そこにはもう白太先輩が立っていた。
どうせなら仮の関係を終わらせてから今日の遊びを思い切り楽しんだ方が吹っ切れていいだろうと思い、別れましょう、という言葉を一番最初に白太先輩に伝えると決心して一歩を踏み出しては1歩後退りし、また一歩を踏み出しては後退りをすると言う行動を何回、何十回と繰り返した。
結局、集合時間を過ぎても決心し切れない自分が嫌になり泣きそうになる。
だが、涙を流すわけにはいかない。そんな私の姿を白太先輩が目にしたらきっと白太先輩は私に優しくしてしまう。
そんな優しさに触れてしまったら今以上に白太先輩から離れ辛くなる。
グッと涙を堪え、別れの言葉を告げる事を一旦諦めて白太先輩が帰ってしまう前に集合場所まで歩いた。
そして、アウトレットモールを見て回るために歩き出したが、私の目の前にあっていつもなら上機嫌でしがみ付いている腕が何百メートルも先にある様に感じてしまう。
どこかで私が勇気を出さなければ、白太先輩と以前の様な関係に戻る事は不可能に近い。
そう思ってまた、涙を流しそうになるのだった。
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