第68話 閑話、少し前のお話

 部活体験が終わり青木が文芸部に入部してから2ヶ月が経過し6月に突入した。


 青木が文芸部に入部してから学校で青木と会話をする機会も増えたが、部活以外では相変わらず関わりが少ない。


 そんな青木に対する申し訳なさと、しつこくデートに誘ってくる青木に押し負け、今日まで土日のどちらかで必ず青木とデートに行った。


 しかし、今週は珍しく青木からしつこくデートに誘ってくることはなく、1人で優雅な時間を過ごしている。


 1人の俺がいるのは本屋。好きな小説の新刊を購入しにきた。


 毎週のようにデートと言われるとしつこく感じるが、急に予定がなくなると逆に寂しくなるもんだな……。


 目当ての本を購入し、帰宅してゆっくり本でも読もうと思いながら帰路についた。


 すると、何やら見覚えのある姿が……。


 俺は思わず物陰に隠れてそいつの様子を伺う。


 そう、青木が同じショッピングモールの中にいたのだ。


 毎週しつこくデートに誘ってくる青木が、簡単に休日に入れる別の予定とは一体なんなんだろうか。


 服でも買うのか?


 俺は申し訳ないと思いながらも青木の後を追った。


 青木はすでに大きな袋を持って歩いている。


 何を購入したのだろうか。


 すると青木は俺が見つけてからすぐショッピングモールを出で、路地の裏の方へと歩いていく。


 どこに向かっているのか心配になった俺はさらに青木の跡をつけた。


 青木はどんどん路地の裏へと入っていき、建物で遮られ日も照らない薄暗い小道を進んでいく。


 そして青木は建物の前に止まって何かを見ている。


 なんのお店だ?


 俺はそのお店の看板を目を凝らして凝視した。


 そう、そのお店はいわゆる夜のお店だったのだ。


 ま、まさか⁉︎


 まだ高校1年生だぞ⁉︎ 俺だって友達から噂でしか聞いたことがないというのに、青木はそこに入って何をするというんだ⁉︎


 青木がそのお店に入ろうと一歩を踏み出した瞬間、俺は路地裏から飛び出した。


「ま、待て青木‼︎ 何してんだ‼︎」 

「……え、先輩⁉︎ なんで先輩がここに⁉︎」

「たまたま姿を見かけたから跡をつけたんだが……。お前、なんてお店に入ろうとしてるんだよ。スタッフとかじゃ無いだろうな」

「……何言ってるんですか?」

「え、だって青木今この店に入ろうとしてたじゃ無いか」

「私が行こうとしてたのは2階のカフェですよ?」


 ……おい。なんでこんな紛らわしいとこにカフェ作ってんだよこの野郎。


 思い切り勘違いしたじゃねぇか。


「やったぁ‼︎ まさか先輩に会えるなんて。このあと暇なら一緒にカフェに入りませんか?」

「あ、ああ。」

「決まりですね‼︎ ほら、ぼーっとしてないで早く入りましょう‼︎」 


 そう言って俺の手をぎゅっと引っ張る青木の可愛さに心の中で悶絶していた。

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