第24話 結末、悩みは意外と呆気なく
「それじゃあとりあえず俺は紅梨を医務室に連れてくから。玄人は別のグループにでも入って遊んできてくれ」
「いや、俺も行くよ」
「大丈夫だ。俺に任しとけ」
そう言って玄人を制し、玄人が別のグループの元へと去って行き俺と紅梨は2人きりになった。
「ある意味持ってるよな。こんな状況でそんなことやらかすとか」
「べ、別にやらかしたくてやらかしたんじゃないし」
俺は紅梨をどのようにしてジェットコースターに乗せないか、そればかり考えていたのだが……。
悩みながら歩く俺の後ろで聞こえたドタッと言う音。
その音の方向を向くと、紅梨が膝をついて座り込んでいた。
「どうした?」
「……足くじいてこけちゃった」
そう、紅梨はこけた。なんの前触れもなくこけた。
紅梨がこけたところには大きな突起物があるわけでもなく、こけた原因は分からない。
足をくじいた紅梨は1人で立つこともままならず、仕方なく俺がおんぶをして紅梨を医務室まで運ぶことにした。
「ごめん、迷惑かけちゃって」
「いいよ全然。気にしなくて」
「……重くない?」
「……重くない」
「あ、今変な間があった」
「いや、間とか全く無いから」
最初は何も考えず紅梨をおんぶしたのだが、それはあまりに安易な考え方だった。
胸が当たる、いい匂いがする、あと微妙に重い。
三重苦と言うよりは二重苦一楽といった感じではあるが、俺の理性がやばい。とにかくやばい。
今まで紅梨を女の子として見たこと自体が少ないため、意識していなかったが紅梨の胸が思いっきり背中に当たっている。
胸が柔らかいのは想像通りだが、身体全体が柔らかい。友達感覚で接してたが紅梨も女の子なんだな……。
って馬鹿、意識するな俺。深呼吸だ深呼吸。
すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁっ。
紅梨に俺がそんなことを考えていると悟られるな。ポーカーフェイスだ。出来る子だ。俺は出来る子。
「白太、なんか緊張してる?」
「緊張なんかするわけないだろ」
「そう? その割に心拍数が上がってる気がするけど」
「き、気のせいだろ」
俺をからかう紅梨はきっと見たことがないほどしたり顔をしているのだろう。ニヤニヤしている顔が容易に想像できる。
なんとか紅梨を医務室まで運び、紅梨の治療が終わるまで待機することにした。
……それにしても良い匂いだったな。
だからダメだって。変に意識するな俺の馬鹿。
……めっちゃ柔らかかったな。
もうほんと殴るよ? 自分の顔殴るよ?
自問自答を繰り返し、少しずつ精神を安定させていく。
「お待たせ」
「お⁉︎ おう。どうだった?」
「……? 軽い捻挫だって。とりあえず今日は安静にしとけって言われた」
「そうか。それならその辺で座って休憩しとくか」
「そうだね。私はどこかで座っておくから。白太は玄人と遊んできていいよ」
「は? 遊びに行くわけないだろ。一緒にいるよ」
「え、でも……」
「大丈夫だよ。こういう賑やかなとこって得意じゃないし、ゆっくり座ってた方が楽だからさ」
「……ありがと」
そして近くにあったベンチに座ってスマホを見ると、大量の通知が来ていることに気づく。
『どうして紅梨先輩をおんぶしてるんですか⁉︎』
どうして青木がそれを知ってるんですか⁉︎
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