第19話 意外、何気ない部活の風景
部活体験では色々あったが青木と紫倉は無事文芸部に入部してくれた。
文芸部的には来年も廃部しなくて済むことになり万々歳だが、俺的には青木が入部したことによって文芸部はさらに
俺が緑彩先輩に告白する前は手放すのが惜しい憩いの場だったというのに……。
新入部員の青木と紫倉は少しずつ文芸部の活動に慣れて来た様だ。
今日は文芸部の部室に部員全員が集まり、相も変わらず本を読み感想を言い合ったり、他愛もない世間話を繰り広げている。
「紅梨、この主人公はどう言う気持ちでいると思う?」
「そうですね、部活の先輩に告白して振られてしまい、居場所は無いけど行くところもないのでとりあえず部室には来ている、ようするにまだ先輩のことが好きですね」
「なるほどね。さすが紅梨だわ」
おいちょっと待てそれ本当に存在する小説か? 明らかに俺の事だよねそれ嫌がらせですかそうですか。ただでさえ緑彩先輩に振られてからメンタル弱くなってるのに俺の心ぶっ壊れちゃうよ?
「白太先輩、ちょっと私に気になることがあるんですけど」
珍しく神妙な面持ちで話しかけてきた青木。
青木が気になることなんて俺と緑彩先輩のことくらいだろ……。
「な、なんだよ」
「いや、多分気のせいだとは思うんですよ? 本人に聞いても違うって言うし。でも、私が見てる感じ、どうもそう思わずにはいられないんですよね」
「だからなんなんだよ」
「紫音と黒瀬先輩、なんか良い感じじゃないですか?」
「――は?」
そう言って俺は紫倉と玄人の方を見る。
確かに、そう言われてから2人を見ると良い雰囲気が漂っているような気がする。
よく考えてみれば部室の中では俺と青木、緑彩先輩と紅梨が会話をすると言う構図が出来上がっている。
緑彩先輩は俺が冷たくしていることに気付いたようで、あまり話しかけてこなくなった。
そうなると救いの手を差し伸べられるのは同性で部員の中では付き合いの長い紅梨ということになる。
青木は俺のことが好きで俺にばかり話しかけてくるから、自然と紫倉と玄人が2人でいるという構図が出来上がることになるのだ。
「まぁ流石に気のせいじゃないか?」
「ですよね。まだ入部してから1ヶ月も経ってないのにそんな関係になるなんてありえないですよね」
え、それ言っちゃう? 出会ってすぐに告白してきた君が言っちゃう? 1ヶ月で付き合うのがありえないなら出会ったその日に付き合った俺たちはどうなるの?
という本音を口にしてしまいそうになったが、それをぐっと飲み込み青木との会話を再開する。
「……まぁ……そうだな」
紫倉と玄人が良い感じだなんて、流石に青木の勘違いだろう。
紫倉も青木に負けず劣らずの美人だし、そんな可愛い女の子が玄人の事を好きになるわけがない。
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