第13話 動揺、鉢合わせた2人
「可愛いって言ったって着ぐるみの中には人が入ってるんだからさー」
「そんな夢も希望もないこと言わないの‼︎ きゃー本当可愛い‼︎」
そう言って青木は着ぐるみ姿の俺に抱きついてきた。
ちょ、まて、急に抱きつかれたら……。
着ぐるみ越しでも良い匂いが漂ってきてやばい。
「もっふもふだよ紫音‼︎ 紫音も抱きついてみたら?」
「私はいいよ……」
ほら、お友達も若干引いてるから。そろそろ俺から離れてくれ……。
「ご、ごめんなさい。この子、余り引っ付かれると機嫌が悪くなっちゃうから」
中の人の事などお構いなしで抱きついてくる青木と俺の間に割って入ったのは緑彩先輩だ。
「そ、そうですか。ごめんなさい猫ちゃん」
そして青木は着ぐるみ姿の俺のの頭を撫で、その場を立ちさろうとする。
「あー白太先輩はどこにいるのかなぁ。なんの部活に入ってるのか聞いてなかったよ」
「……白太先輩?」
あーやばい。緑彩先輩にも玄人にも、紅梨にも完全に聞かれた。
やばいぞー。
「今の子、白太くんを探してたわよね?」
緑彩先輩に尋ねられた俺は着ぐるみの中でダンマリを決め込む。
俺は白太ではない。猫なのだ。
俺は猫。俺は猫。
「こら、ごまかそうとしてもダメよ?」
「……にゃー」
「こらっ」
「す、すいません」
「それで、あの子は誰?」
「あ、あの子は……、たまたまあの子が落としたハンカチを拾ってあげたんです‼︎」
「……ハンカチ?」
「そうハンカチです‼︎ それでちょっと顔見知りになっただけで……」
「……そう。それならいいのだけど」
……なにが? なにがそれならいいの?
今ので乗り切れたのだろうか。俺が青木と付き合ってるってバレてないよな?
「いやーお前羨ましいぞ。新入生の可愛い後輩ちゃんが落としたハンカチを拾って知り合いになれるなんて羨ましすぎる」
よし、大丈夫だ。なんとかバレていなさそう。
いやーそれにしても、またこうして青木に抱きつかれる日がやってくるとは……。
流石にドキドキしてしまった。
とはいえ、青木が学校に来たこの日だけでもこれだけピンチが訪れると言うのに、これから先、俺はどうやって学校生活を乗り切ろうか……。
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