第5話 決意、新たな人生を始めよう

「今なんて言った?」 

「私と付き合ってくださいって言いました」


 どうやら俺の聞き間違いでは無いようだ。


 落ち着いて状況を整理すると、青木に付きまとっていたストーカーを退治し、青木から告白をされたってことだよな。


 ……いやわけわかんねぇよ。今初めて会ったんだぞ?


「ま、待て。今初めて会った俺と付き合って下さいってのはどういうことだ?」

「白石先輩は私のSOSに気付いて、私がずっと悩んでたストーカーを一瞬で撃退してくれた優しくてカッコいい人です。王子様です。私にとって白石先輩よりも好きになる人なんてこの先現れないと思います」

「いや、でももうちょっと考えたほうが……」

「嫌です‼︎ 私は白石先輩が好きです‼︎」


 ダメだ、青木はもう周りが見えていない。


 ……自分で言うのも恥ずかしいが、青木の気持ちが分からない訳では無い。

 俺も緑彩先輩に一目惚れをして、そこから今日までずっと緑彩先輩に恋をしているわけだしな。


 とは言っても、今さっき緑彩先輩に振られたばかりだし、この子と付き合うっていうのは流石に難しい。


「俺、今さっき同じ高校の先輩に告白して振られたばかりなんだ。だから、君と付き合ったとしても俺は先輩のことをしばらくは忘れられないよ? それでもいいの?」

「全く問題ありません。私が先輩を夢中にさせて見せます‼︎」

「でも……」

「嫌です、私は先輩と付き合えるまで先輩を離しません‼︎」


 そう言って子供のように駄々をこねてしがみつき、俺の胸に顔を踞うずくめる青木。


 なんとか冷静な判断をするよう促すが、考えは変わらないようだ。


 今この子と付き合ったとして、そのことが学校の奴らにバレれば今まで散々先輩のことを好きだと言いって起きながらなぜ別の女の子と付き合っているのか? と疑念を抱かれ被害を被るのは俺の方だ。


 この子と付き合うリスクは高いと言っていい。


 だが、先輩に振られたばかりで心に傷を負いっている俺が癒しを求めているのも確か。

 これほどまでの美少女に告白をされて付き合わないというのはもったいないし……。


 ――いや、悩むことなんて一つもないな。


 緑彩先輩は、俺とは付き合えるわけがないと言い放った。俺がこれからも緑彩先輩のことを好きでいる理由は無い。


「分かった。付き合おう」


 そして俺は青木蒼乃ととりあえず付き合うことになった。

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