僕のギター、

 学園祭の閉会式、そして、バンドメンバーとの打ち上げを終え、椎と来未と別れ、僕と結月が二人になった。結月の家の前まで来て、きっと僕の気持ちを伝えるのはこの時しかなく、ここを逃すと一生伝えられない、そんな気がして、結月を呼び止めた。

「どうしたの、真一」

「機材、ここまで運んできたけど、どうせだったら部屋まで運ぶけど」

「ああ、そうだよね。いいよ、入って。行くときはヒナが手伝ってくれけど、私ひとりじゃ大変だし、一人で運ばせてたら、真一がヒナに怒られるもんね」

「じゃあ、お邪魔します」

 長岡家の両親に挨拶をし、上がらせてもらう。

「ヒナはまだ帰ってきてないみたいだね」

「まあ、僕らと一緒でうちあげしてるんだろう」

 結月の部屋に上がらせてもらう。

「失礼するよ」

「入って入って。ちょっと汚いかもだけど」

 そんなことはない。僕は彼女のギターと、ポータブルのアンプを部屋に置く。このタイミングがチャンスだと思った。出なければすぐに帰ってしまうことになる。

「そうだ、聞いてほしいものがあるんだ。よかったりギター、貸してくれないかな」

「いいけど、どうしたの」

「練習したんだ。聞いてほしくて」

 今、置いた結月のギターとアンプをカバーから取り出す。セットして、音量を小さめにし、準備を終える。

 そして、僕は、彼女が好きなラブソングを歌った。


 彼女の拍手を聞いて、伝える。

「ゆず姉のことが好きだ。だから、これからは恋人として隣にいてほしい」

 僕が言葉にしてそれを伝えておかないといけないと思った。だから僕は、君と一緒に演奏したのだと。だから僕は君のギターで歌ったのだと。

 それを伝えたから、僕の願いに彼女が許してくれたから、僕らは恋人になることにした。

 それが、彼女の僕への情けだったとしても嬉しかったし、そんなことに彼女の時間を割いてくれたことが、どこかつらかった。

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