小恐怖 回ったダイヤル
@nakamichiko
第1話前編
「絶対冗談でしょう、新人の肝試し、誰かが隠れているんでしょ」
山間の小さな建物の中に僕の声が響いていた。
僕は電気技師として働き始めたばかりの新人だ。その新人の役目の一つが
「四年に一回の無人施設の点検」
だった。
幹線道路から電線がここだけに向かって伸び、道は途中から林道になる。本当は数人で行く予定だったが、三年前入社の先輩は奥さんが臨月を迎えているし、二年前の人はインフルエンザ、で、「恐怖映画なんて、何故この世に存在しているのかがわからない」僕一人で行くことになってしまった。
コンクリートだけの施設。金属の重たい扉を開けて十畳ほどのスペースがあるが、タダの伽藍洞で、配電盤があるだけなのだ。
「とにかく連絡を豆にくれ、林道は危険だから。それに・・・」
不思議なことが起こっている場所でもあった。
林の中の真っ暗な施設は日差しもそれほど入らずに、入り口の横の電気のスイッチを手探りで探し出し、何とか電気を付けた。
それと同時に何かガサガサと音がして、僕の心臓の鼓動は自分で聞こえるかのように早くなっていた。
「何だ! 何だ! 」
この大きな声に部屋は静まり返り、誰もいないとわかっているものの
「誰かが隠れているんでしょ! 」と叫んでしまったわけだ。
とりあえず配電盤の確認をして、ミイラと化した虫の死骸を外に出し、確認の写真、ムービーも一応撮り、早めに仕事を終えた。
「絶対にしないぞ! ダイヤルの確認なんか! 」
そう叫んだ後、僕の電話の着信音がなった。
「おい、大丈夫か? 」
会社の先輩からだった。
「ハイ、仕事は終えました、今から帰ります」
「それはないだろう、確認してくれよ」
「嫌ですよ、僕がビビリなのを知っているでしょ? 」
「それを払しょくするにも丁度いいだろう? 悪いが恒例行事、やっておいてくれな」
その後すぐに切れた。
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