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 メネスカーの第1世代はアメリカやイギリス、フランスといった欧米諸国で発売をした。アジア圏やアフリカ圏での発売は「技術的問題で今回の発売は見送る」と発表があった。メネスカーはまず法人向けに普及を目指した。


 工場、飲食店での応対などにメネスカーは充てられた。特に食品を扱う会社からの注文が多くあったという。高性能な人工皮膚で高レベルな抗菌を保っていることが調査で判明、企業はユーザーからの信頼も獲得できるとして導入に踏み切った。メネスカーは当初、簡単な作業をこなしていたが、徐々に複雑な作業にも対応していく。そして、法人でのアンドロイドシェア世界一を獲得した。


 ただ、新規の製品に付き纏う問題、初期不良だ。

 メネスカーの普及は進んでいく中で故障が多く発生し業務の停止も頻繁に発生した。原因は法人向けに人工知能を制御していたことにあった。自分で考えることのできるメネスカーは単調な作業でも効率の良さを考えると制御されている部分にアクセスが出来ず、ソフトエラーを起こす。多くのメネスカーに問題が発生していた。知能の高さから発生する問題だった。


 アメリカのメディアにプレムはこの問題について答えている。

「第1世代はまず縁の下の力持ちを目指そうとしました。単調の作業にはフルパワーの彼らは必要ないと判断しました。ですが、我々が予想していたものよりも遥かにメネスカー達は成長を遂げ、限界に達しました。制限を掛けているという報道は事実です」

「制限の解除、もしくは新たな制限を設けることは考えていますか?」

「非常に難しい問題です。他社製品のアンドロイドが人間を殺害するという問題も発生しており、メネスカーも将来的にはこの問題に対して直視する必要があります。ただ、彼らをずっと縛り続けるのは誰の利益にもなりません。これから検討をしていきたいと思います」


 第2世代の発売は第1世代の発売から2年が経っていた。通常アンドロイドの新規製品のスパンは1年弱とされており、キッド社はその流れには乗れていなかった。

 第1世代では法人向けに知能の制限を実施したが、プレムは第2世代でシェア拡大のため、個人向けに発売するかどうか悩みに悩んだという。


 競合製品が「人間のパートナー」を全面に押し出している中、メネスカーは工場ロボットなどと揶揄され、メネスカーに対する市場のイメージを変える必要があった。人間との生活の上では知能の制限は取り払う必要がある。ただ、アンドロイドによる殺害という最悪の問題も存在する。キッド社内部では賛成派反対派がはっきりと分かれた。2年の間にはそれらの決断が含まれていた。


 キッド社はメネスカーの第2世代発売、個人向けとして全世界で発売することを発表、知能の制限は一切ない事を大々的にアピールした。また、第1世代での記憶を移行できるサービスを開始。人間側のサービスでは人の記憶をバックアップすることが可能になり、その記憶をメネスカーに移行が可能となった。


 第2世代の登場で一気にシェアを拡大、一位に躍り出た。特に記憶移行について人間の記憶も移行できることが市場に強いショックを与え、「死者の復活」も可能となったこともシェア拡大に貢献した。


 キッド社の製品を発売する「キッド・ストア」は全世界に出現、キッド・ストアのスタッフは社内での上級試験を通過したものが運営することもユーザーの信頼を増幅させた。

 

 「死者の復活」「アンドロイドの死」を巡って人権団体である「生命の風」がキッド社に対してサービスを停止するよう要望を出した。

 団体の総長ニックは発表の際に、

「キッド社のプレムは皆さんの親愛なる家族を墓場から掘り起こせと叫んでいます。それらが許されると思いますか」

 彼の叫びは、ずっと家族で暮らせるという希望の声に掻き消され、ただの雑音となっていた。

 

 人間の死に対して、世界の多くの人々が過剰に恐れていたこともあってか発売から普及のペースは留まらず一世帯に一人(キッド社はメネスカーを一人と数える)の数字を記録した。

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