第2668話 73枚目:推定最終ステージ

 次が恐らく最終ステージ。時間加速もあるかどうか分からず、文字通りに全く情報が無い。ナージュの神殿自体は最低限のクリアで戻った人達によって建てられているだろうし、恐らく私の拳銃に対する反応からして、高い精度が必要な金属製品があれば興味を引いて分霊を託してもらう事が可能になるんだろう。

 神殿を作るのは、神として疑似的に復活させる為だ。直接分霊を連れて帰れるんなら、そっちの方がいいのは間違いない。より本来の本体に近いって事だし。……加護についてはまぁ詳細を見ていないからともかく。

 ま、情報が無いのは今更だし、少なくともこの世界に来て残っている「モンスターの『王』」、少なくともそう呼称されていた存在は“呑”むとやらが最後だ。だから次で最後は間違いない。


「……え」


 だと、思っていたんだが。


「なん、で。いやでも、あれは……魔族? まさか、こちらの世界……?」


 目の前に見えたのは、非常に高く、堅牢な防壁だ。その上にずらりと並べられているのは防衛設備だろう。私が判別できるだけでも範囲型から一点集中型まで、さまざまな種類がある。

 そしてずらりと並んだ設備に並び、その間を行き来しているのは、魔族に見えた。もちろんこちらの、フリアド世界における種族だ。近い種族か、と思ったが、そもそも防衛設備を私が判別できるって時点で恐らくこの世界だろう。

 そこまで確認してから周囲を見ると、どうやら私はその町、いや街か。その周囲にある森の中にいるらしい。森と言うか、密度が少し足りないから林だろうか。木材用に管理された森に近い気配がする。


「……周辺に罠の類はなし。随分警戒している様子ですし、ここも防衛林かと思いましたが、そうではないようですね」


 とりあえずは現状把握。と言う事で周辺を確認。正直、こちらの世界ってところでだいぶ動揺した。が、冷静になって考えてみると、今このタイミング、この流れで魔族ってダメなのでは? と思い直す。

 だってさ。元凶だって魔族の筈だからな。マイナーチェンジ()がどういう方向かは知らないが、それでも魔族だった筈だ。そして今この、「モンスターの『王』」の過去編を順番にやっていく流れで出てきたって事は、何かしら「モンスターの『王』」に関わっているって事だ。

 んでもって。元凶の魔族は、世界の完全征服を夢見て、それを実行に移し、ある程度は成功している。世界を敵に回し、それである程度の成果と勝利を得たという事であり、それだけの実力があったという事だ。


「あれっちぃ姫じゃん!?」

「っしゃ勝ちフラグキタっ!」

「おや?」


 さてそれを念頭に置いてどう動いたものか、と思ったら、聞き覚えのある声がした。というか気配が分からなかったんだが、と思いつつも振り返ると、そこにはベテラン勢の中でも特に古参の、第一陣から最前線に居る召喚者プレイヤーの2人組が。

 彼らも先にナージュのステージをクリアしたとみられ、戻ってきていないリストに入っていた筈だ。つまり先駆者だな。そして彼らがここに来たという事は。


「もしかして、新規参入召喚者プレイヤーのポップ地点ですか、ここ」

「話が早くて助かる」

「そゆこと。あと住民組は最初からここだったらしい上にずーっと時間加速状態なんで、かなり時間経ってる」

「ようやく合流なんですね」

「そうよ。いやー、子守りドラゴンだった方の『勇者』には頭上がんねぇわ」

「まだ残ってた竜族の軍経由で、連合軍に召喚者プレイヤーの存在を味方だって周知してくれたからな」

「また過労レベルで働いてる気配がしますねぇ。頼りになりますけど」


 つまりそういう事らしい。なるほどな?

 しかし竜族の軍がまだ残ってた、って事は、あれか。再び国を最初の大きさに押し込んだ直後か直前ぐらいか。どうしようかって相談してる間にあの世界規模スタンピートが起きた筈で、そこまでの細かい時間は分からないが、流石に数日って訳じゃなかった筈だ。

 ……にしても、そこまで小さくない国1つを探索して、何らかのアクションをしなきゃいけない時間としては、まぁ随分と短いんだろうけどな。とりあえず、急いでエルルと合流するか。

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