第2633話 73枚目:捜索結果
推定元凶の女性は、石が運び込まれた時だけ立ち上がって横に避ける。そうした方が、祭壇に乗せる石の入った箱の入れ替えがスムーズに行くからだ。
まぁ横に避けるっていっても1mぐらいだし、避けている間は神官の人達がその上を通っている。石の入った箱の入れ替え自体も1、2分なので、蓋を開けて中に入る事は出来ない。
だが、誰にも見えないしすり抜ける状態なら、私がその通路があるだろう場所に陣取っても邪魔にならないし、その場所、石のタイルが並べられたような場所に手を当てれば、私だって相応の広さを風で探知する事が出来る。
「割と頻繁に石の交換をしてくれたお陰で、何とか構造が分かりましたね」
とはいえ、やっぱり相応の時間がかかったらしく、外に出たら太陽はそこそこに傾いていた。防御魔法は健在だったが、「マサーカーケッテ」の数は最初の頃に戻っている。撃破出来てなかったからな。それはそうだ。
しかし、とちょっと思うのは、この「マサーカーケッテ」がどこから来ているかだ。何しろ推定元凶は神殿の奥で祈り続けている。外でどうこうしている暇は無いし、そんな事をすれば目立つだろう。
……まぁ、ここまでも大体、原因である名前の無い邪神の眷属と、その眷属と契約をした誰かは別行動してたからな。今回もそういう事だって事なのかもしれないが。
「とはいえ。地下に繋がる別の通路があるようで良かったですね。最悪夜になってから地面を掘るか、あの女性を無理矢理眠らせてどけるかしかないかと思いましたし」
神殿の中を移動して、時々魔法を使って勝手に扉を開けつつ、たぶんアクティブソナー的な調べ方で把握した地下の構造から、あの祭壇の前にある通路とは別の通路がある筈の場所へ移動する。
しかし、進めば進むほど焦げ付きのような色が増えていくのは既に嫌な予感しかしないんだよな。恐らく目的地は神官の人達の生活スペースになるんだろうが、それがここまで推定名前の無い邪神の眷属の力に浸食されてたらダメだろ。
とか思いつつ最終的に辿り着いた部屋?
「うーわ、真っ黒。二重の意味で」
素が出てしまうのも致し方なしってもんだよ。だって地下へ続く通路があったのは、たぶんだがあの、推定元凶の女性の部屋だったんだからな。
もう扉が焦げ付きのような色でべったりだった時点でこれはもしやと思っていたのが、中に入ってみたら確定だよ。魔視でみた部屋の中は隙間なく焦げ付きのような色で塗り潰されていたし、通常視界で見つけた手記のようなものを覗かせて貰ったら、神の力と格を簒奪する為の計画が書かれていたんだから。
なおその中にはしっかりと名前の無い邪神の眷属との契約内容もあったし、それのお陰で「マサーカーケッテ」に関するあれこれも全部わかったのはまぁいいとして。
「…………泥よりマシ、だと思うしかないですね……」
その部屋の中にあった地下への通路は、まぁ酷いものだった。思わず領域スキルを展開しそうになる程度には焦げ付きのような色がべったりだ。魔視の強度を下げれば普通の石造りの階段があるんだが、そうでなければ丸い滑り台のように見える程に分厚く力がこびりついてる。
辟易しながらもちゃんと通路の蓋を元通りに閉めてから階段を降りていく。【暗視☆】があるから、灯りなしでも問題ない。むしろちょっと暗い方が、焦げ付きのような色が暗闇に紛れて気分的にマシだ。
流石に自分の私室にある通路だからか、罠らしいものは何も無かった。まぁ、いらないか。普通はこんな密度と量をした邪神の力の中に突っ込めば、無事じゃ済まないから。
「とはいえ、神を見つけたとしてどうしましょうかね。捧げもので力を取り戻してくれれば話は早いんですが、もし地下から動かせないとか言われたら困りますし」
後は、神がいる場所の周りぐらいは綺麗でいてほしい。切実に。私の耐性と種族特性的に、この焦げ付きのような色がくっつく事は無いんだけど、すごく嫌だ。もう今の時点でお風呂入りたい。
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