第2559話 73枚目:果てへの行き方

 しばらくの間色んな魔法を大穴に向けて出してみたが、やっぱりこれと言って変化は無かった。いやいいんだけど。何か入って来たって事で“呑”むがこっちに手を伸ばしたりして来るよりは何も無い方がいいんだけど。

 で、私達がそんな事をしている間に、この最後のエリアにあった構造物がほとんど壊せたらしい。構造物が壊れるとモンスターも湧かなくなるので、一掃できるという事だな。

 エリア内部の敵側リソース、少なくとも表に出ている分を一掃したら、次のエリアへの道が開かれるというのがここまでのパターンだった。だが今回、次のエリアがどこにあるかを示す陽炎のようなものの壁はどこにもない。じゃあどうなるか、というと。


「こちらで建てた「家」への突入者が戻ってこない?」

「はい。なおかつ次の突入者が入れるようになっています」


 どうやら、あの「家」が突入口になる仕様だったようだ。ただし、エリアの東側に建てられた「家」はここまで通り、復活レイドボスの連続討伐が出来る仕様らしいので、恐らくこのエリアのリソースを使い切らせた場所なら、という事なんだろう。

 全く連絡が取れない、というのは、ログアウトしてからリアル経由で、というのも含まれる。恐らく状況からして、復活レイドボスの連続討伐が終わったらそのままどこかに送られたか、別の空間に強制移動させられたかだろうから、それでなおかつログアウトしてでの連絡がないって事は……。


「……ここで時間加速が来ますかー……」

「そうですね。司令部でもその可能性が高いという判断になりました」


 いや、まぁ、そりゃぁな……「狂い崇める外法の禍壁」の時に、これでもかと時間加速を使われていた以上、ラスボスが使わない道理はないだろうけどな……。

 ただ1つ思うのは、今日、イベントの、最終日だぞ? っていう。


「かといって、残り時間からして、帰還を待っている余裕はないでしょうし」

「内部の状況は分かりませんが、時間加速があるとするなら「狂い崇める外法の禍壁」と同様、状況解決の必要があるかと思われます」

「問題は、何が待ってるかって事ですよね。それこそ四隅のステージのように、浄化によって成れ果てた元分霊とその神域を何とかする、ならまだ可愛いものですが」

「そうですね。しかし、「異界の大神の悪夢」とでも呼ぶべき状況は、おおよそ解決し終えている筈ですし」


 つまり司令部でも何が待ってるか分からないって事か。まぁそうだな。情報がほぼ何も無いんだから。時間加速があるんだろう、っていうのも前例からの推測でしか無いし。

 ただそうなると、何を準備していくべきだろうな? 一旦ログアウトして連続ログイン時間をリセットするのはやるとして、間違いなく“呑”むの影響が強いところに踏み込む事になる。

 既に歪んでしまった場所への接触。となると、それこそ分霊の神域に踏み込んだ時とは危険のレベルが違うだろうし、何なら踏み込んだだけで全力でリソースを持っていかれるぐらいはありそうなのがな……。


「とりあえず、まず一旦皆の休憩を兼ねて私はログアウトします。時間倍率も、かかる時間も分かりませんし」

「そうですね。こちらでは可能な範囲で食料を用意しておきます。異界の大神の一部であるというのなら、傷を回復するより食べたり飲んだりするものの方が必要でしょうし」

「お願いします」


 そういう注意と準備と心構えを皆に伝えて、行動開始だな。ログイン制限が開けたらすぐに戻ってくるつもりだから休憩は2時間しか取れないが、ちょっとでも休んでおいてもらおう。

 特に先行してモンスターと構造物の群れに突っ込んだ『勇者』の2人だ。サーニャは素直に仮眠をとってくれるだろうけど、エルルは料理してそうだからよくよく注意しておかないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る