第2550話 73枚目:戦力最大化

 そう言えばそう言う注文もしてたな。

 と気付いたのは、材料を取りに倉庫にいって、それを見つけた時だ。何の事かって言うと、でっかい釜だな。ポーションを作ってるやつと同じ型の。

 倉庫に入れられてからしばらく時間が経った気配のそれを見て、もっと大きな釜があれば一気にポーションを作れるのに、と言った事を思い出した。たぶんルージュかアリカさんが、忙しい隙間をぬって作ってくれていたんだろう。

 そして折角見つけたので、それなら使ってみるかと生産部屋に運び込む。一旦インベントリに入れてしまえば道中目立つ事も無いし。


『なぁ「第三候補」、送られてくるポーションの量が跳ね上がったんだけど?』

『大きい釜を使うと一度にたくさん作れますよね』

『やっぱりか!! 品質落ちてないからそんな気はしたけど、希釈してないんだなこれ!? いや希釈しててこれだと更に怖いけど!!』


 そんな会話もあったが、「第四候補」は頑張ってほしい。大丈夫。量に応じた料金だけでなく、一定量を越えた事による割増料金もしっかり払ってるから。ほら、稼ぎ時だよ。ファイトだ。

 ポーションづくりで一番時間がかかるのは、素材を入れて煮込む(?)時間だからな。ステータスとアビリティで短縮できるが、それでもある程度かき混ぜる必要がある。素材の量を確認して投入するっていうのも、回数が少ない方がいい。

 結果? 「第四候補」による希釈待ちだけど、午後のログインで相当な量が作れたよ。これで少なくとも、司令部の要望である水曜日まで持つ量、っていうのは満たせただろう。


「補助回復アイテムのパンもたくさん作れましたし。ジャーキーにしてからすり潰して混ぜればいいっていうのは盲点でしたね」


 なので、煮込み肉とそのスープもちゃんと外に出せる形に出来た。そちらも合わせれば、総合回復量はかなりのものになるんじゃないだろうか。ほんのりお肉味のパンっていうのも美味しいな。このままでも食べられる。

 それをパンなら具を挟むし、ピザ生地にも出来るし饅頭系にも出来る。生地が美味しいと幅が広がるな。まぁ全部ソフィーナさんのアイディアなんだけど。ありがとうメインコックさん。

 流石に麺類はぱっと食べるには向かないって事で見送ったが、たぶん麺にしても美味しいよなぁ。シンプルな醤油ラーメンとか。おっとよだれが。後でリクエストしてみよう。落ち着いてからになるだろうけど。


「そして私がそういう事をしている間に、手前の4区画は全部突入できるようになったんですね」

「そんなに前に出たかったのかっていうのはともかく、あの建物がある程度攻略したら消えるって言うのも分かったな。で、空いたところにこっちで建てたら、あのデカイのに連続挑戦できるようになるらしい」

「それでサーニャの姿が見えないんですか。まぁいいんですけど。その分だけ徐々にでも穴が塞がっているのはそういう事でしょうし」


 最前線はそんな感じらしいな。もちろん今も、塗料があるところに生きたモンスターを放り込んで復活レイドボスに変える動きは続いている。これをしないと「家」及び住宅街パネル(仮)、ひいてはエリアそのものが攻略できないからね。

 あの「亜神の一部」の情報が出た事で、自己強化に全振りしている勢とかも攻略に参加してくれたらしい。後は司令部というか元『本の虫』組が始めたらしく、復活レイドボスの連続討伐ランキングとかをやっていて、ひたすらに戦闘を求める勢も前線に出てきたようだ。

 司令部は相変わらず情報の扱い方が上手いな……。という事で、ラスボス戦というのもあって、最前線の人数は更に増えている。


「まぁそうやって増えた分、消耗が想定より進んだって言うのもあるでしょうけど」

「いくら作っても足りないって悲鳴が上がってたぞ?」

「相当な量を作ってきましたし、回復する食事も一緒に作って出してきましたから、しばらくは持ちますよ」


 さて、私も残ってるうちの子と一緒に、復活レイドボスの連続討伐チャレンジだ。やっぱり殴れば倒せるっていうのはいいな!

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