第2549話 73枚目:先のこと
『なぁ「第三候補」、今ログインしたら希釈用ラインに過負荷がかかってるって警告出てんだけど? 何したの?』
『おはようございます「第四候補」。司令部の依頼で消耗品を作っているだけですが。詳しくはクランメンバー専用掲示板を確認してください』
『なるほどそれで飛ばしてる訳だな! 分かった対応する!』
そんな会話があったのが午前10時ぐらい。おはようにはちょっと遅いかもしれないが、元々「第四候補」のログイン時間は揺れが大きい。午前中で初めてあいさつしたんだからおはようでいいだろう。
まぁそういう調子で生産作業を続けたかいあって、市場でじわじわ上がりつつあった消耗品の値段は一応落ち着いたようだ。ここでインフレを起こしている場合じゃないからな。転売は儲からないぞ。少なくともフリアドでは。
ちなみに補助の回復アイテムとして、例の煮込みスープをいい感じに薄めて使った総菜パンも売り出しておいた。お肉の方は薄め方が分からなかったから、ジャーキーにしてうちの子に配った。流石に煮込み肉を更にミンチにしてこねるって訳にも行かないだろうし。
「ん? 午後もまた生産作業ですか?」
何だが、司令部の指示は引き続き生産をお願いしますだった。十分な量は出たと思うんだが……と思って指示の詳細を見ると、今のペースだと落ち着いた状態が続くのはリアル今日いっぱいらしい。マジか。そんなに消費ペースが早いのか。
なので今月いっぱいとはいかなくても、せめて次の山場だろう水曜日の夜までは耐えられるだけの消耗品を作ってほしいようだ。もちろん私だけではなく、一定以上の生産能力を持つ
でも理想を言えば、今月いっぱい耐えられる消耗品がほしいよな。とてもよく分かる。というか、始まる前はそのつもりで用意したんだけどな。やっぱり足りなかったか。
「まぁ前準備の時は、世界各地の国や神殿が蓄える分もありましたからね」
現在そちらは大丈夫というか、十分な量があるようだ。頑張ったかいはあったらしい。
後は、私がついでで作った総菜パンも大人気らしい。だろうな。ソフィーナさんの方が美味しいってだけで、私の【料理】スキルもちゃんと上がっている。慣れたレシピなら美味しく作れるぞ。
という事で生産作業再び。いやいいんだけどな。私がいなくても復活レイドボスの討伐ペースは変わらないし、私が持っている「異界の石板」のレベルはかなり高い方だ。まだ追いつくのを待つ側だから、生産作業に回っても問題ない。
「……しかし、そろそろエルル達の方が「異界の石板」のレベルが高くなっているのでは」
それで問題あるかって言われたら、まぁ、無いんだけど。私が一番である必要は無いし、正直戦闘力だとエルルとサーニャに勝てる気はしない。それでいいんだけどな。仲間がいるって言うのはそう言う事だ。頼りになるね。
……ま、追いつく分にはすぐだろうからいいか。それに「亜神の一部」の情報が公開された以上、「大神の悪夢」の挑戦者と挑戦回数は跳ね上がる。いくらポーションを作っても、ダブついて価格が暴落するって事は、まず無い。
「実際は、ラスボスを倒して、そこからどうなるか次第ですが」
かつての予想通り、ラスボスを倒して、そこからようやく本当に『自由』な旅の始まりなのか。それともメインストーリーが終わったという事で、まさかのサービス終了か。それは分からない。
フリアドの運営の事だから、予想もつかない斜め上の方向にすっ飛ぶゲフン進むって事もあり得るだろう。これまでがこれまでだからな。異界の大神の分霊と交流が出来た以上、今度はその縁を伝って異世界の復興をする事になるのかもしれない。
まぁ何にせよ、目の前の、この世界の問題を解決してからだ。そしてその為には戦う必要があり、今の全体戦力を維持する為には消耗品が必要。それも大量に。
「さて、頑張るとしましょう」
リアル今日いっぱいかかってもいいから、今月を走り切れるだけのポーションを用意するとしようか。たぶん司令部の本音はそういう事だろうし。
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