第2525話 73枚目:攻略検証

 コンパスを頼りに移動していく先であったのは、開けた場所だった。制限された領域スキルの4倍ぐらい、約10m四方ってところだろうか。

 そしてそこには、森のミニチュアみたいなものが設置されてあった。1m四方ごとにブロック分けされてて、その間に50㎝ぐらい歩ける場所がある。なんだこれ?

 周りを見ても、私以外辿り着いた誰かはいないようだ。まだ来てないのか、そもそもこの空間にいないのかは分からないが。何しろ目の前にミニチュアの森みたいなものがあるし。


「間の通路(?)を含めて、ブロックの数は6個ずつで36個。通路を無くせば100個まで並ぶのにそうしないという事は、これは踏んだらダメなものなんですね」


 踏んだらダメというか、たぶんこの分だと、このミニチュアがそのままどこかに干渉するんじゃないだろうか。だって端っこの1つを見たら、森の中をうろうろしている人影があったし。

 残念ながら私の視力をもってしてもそれが誰かまでは分からなかったというか、「人型」という人形が動いている感じだったので、分からないようにされているんだろう。個人の識別は出来ないって事だな。

 ついでに言えば、その36のブロックの中心には今私がいる場所と似たように開けた場所があり、そこには何かをはめ込むような石板があった。ただしその大きさは、森の中をうろうろしている人影の何倍も大きい。


「というか、私から見たら「異界の石板」そのままなんですよね。大きさも穴も」


 今も私は手に持っているが、見比べてみても全く同じなんだよなぁ。という事でブロック内部を動く人型の動きを見て、単独探索に慣れてそうなブロックを選び、その中心に据えられた「異界の石板」に、こちらから「夢」アイテムと「残滓」アイテムをはめ込んでみた。

 選んだのは恐らく大勢が直近で手に入れている「太平の夢」と「幸いの残滓」。さてこれでどうなるかな、とそのブロックの様子を見ていたら……ブロック全体の地形が変わっていった。


「あー……なるほど」


 変わった先は、もう見慣れた感もある迷路だった。石造りで通路ばかりのそれは、使ったアイテムをドロップした「モンスターの『王』」をオリジナルとする復活レイドボスがいたダンジョンそのままだ。そのブロックの中にいた人影が変わっていく地形に驚き、生えてくる壁から逃げ回っているのはちょっとすまないと思ったが。

 階層は1階のみであり、例の罠部屋はとりあえず見当たらない。中央には大部屋があってそこにボスが待ち受けている。巨大なスライムなので、恐らく「抱き溶かす異界の絡禍」だろう。

 ここでちょっと考えて、杖を手に取った。しっかりと魔力を制御して出力を絞り、光球を設置する魔法を、ミニチュアの迷路の内人影の近くの通路に設置する。


「まぁ、そうなりますよねぇ……」


 すると、狙った通り設置出来た。つまりこれはあれだな。協力して攻略するタイプのダンジョンだな? 何故私が手助け側に配置されたのかは分からないが、心当たりが多すぎるからその理由については一旦さておくとする。

 案の定すぐ私が設置した光球に気付いて人影が近寄って来たので、もう一度迷路の構造を確認し、中央の大部屋へ誘導する形で光球を設置していく。ミニチュアだが、人影からすれば探索範囲が広いからな。

 他のブロックでも同じようにすればいいんだろうが、とりあえずこのブロックで人影がレイドボスを倒したらどうなるかだけ確認しよう。ブロックが消えるのか入れ替わるのか、この人影がこっちに来るのか、その辺全く情報が足りないっていうかノーヒントだからな。


「この人影が司令部の人であればベストですが、ベテラン勢もしくはうちの子には違いないでしょうから、合流できるならしたいところですし」


 それにしっかり「夢」アイテムと「残滓」アイテムを持ち込んでいると言っても、やっぱり数に限りがあるからな。もし合流出来たら、キーアイテムの余裕もできる筈だし。

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