第2515話 73枚目:ダンジョンクリア

 で。実際罠の解除は順調に進んだのだろうし、こちらはこちらでレイドボス「遍く染める異界の僭禍」を足止めする為に足元を主に攻撃しまくっていた。物理的に足が無ければ移動できないタイプだし、今回は移動より再生を優先するみたいだからな。

 結果、無事に罠が全て解除されるまで足止めは続けられた。ちょっと予想外だったのは、罠の最後の1個が解除された途端、「遍く染める異界の僭禍」がもだえ苦しむような様子を見せたって事だ。

 警戒して距離を取っている間に、胸の中心を突き破って出てきたのは他の「モンスターの『王』」の特徴である部位。それがボコボコと溢れるように巨大ロボのあちこちから出てき始めた時点で攻撃を再開したんだが、どこであっても普通に攻撃が通った。


「……。もしかして、罠は干渉と制御の為のもので、あれが核。そして制御を失ったとかいう?」

「あー」

「なるなる」

「性質悪いんよなぁ」


 まぁ攻撃が通るんなら後は削るだけだ。という事で盛大に攻撃を叩き込み続け、誰の攻撃が最後かは分からないが、無事「遍く染める異界の僭禍」は討伐できた。ダンジョンボスだからこれからも出てくるだろうけど。

 そして討伐成功すると、大部屋の中心に魔法陣が現れた。司令部の人が調べてくれたが、これは転移先を選べるタイプの帰還魔法陣のようだ。……あぁ、なるほど。今回は突入した場所が断崖絶壁(落ちたら即死)だからな。

 司令部の人によると、帰還魔法陣の有効期間は大部屋にいる突入者が全員脱出してから5分。その時点で内部にいた人は、強制的に入口に戻されるんだそうだ。


「とりあえず、何人か脱出してから新規突入を止めて、その人達がここまで来てから脱出した方がいいのでは?」

「そうか、まだ司令部把握してないんか」

「それはせやな」

「道案内役も功労者だし、あそこに出て人数で押し出されるのは、うん」


 それに、最初の突入位置によっては結局合流できず、突破からの強制脱出を待つしかないからな……。具体的にはサーニャとか。結局見つからなかったからな。どこにいるんだ。もしかしてあの檻の部屋、他にもあったのか? と割と本気で思いつつある。

 次突入する時は、共鳴石の音叉を持たせるべきだな。と思いつつ私達はしばらく待機。しかしそこそこ時間がかかったな、と思って残りログイン時間を確認してみると、5時間となっていた。7時間もかかってたのか。

 もうちょっとで人間種族召喚者プレイヤーが息切れしてたな。スタミナ的な意味で。人によってはそろそろログアウトの時間かもしれない。その前に脱出できるようになって良かった。


「しかし厄介な構造でしたね。強制的に孤立させられる上に探索範囲が広いとか、次の階段の位置とか。まぁおおよその構造は変わらないでしょうし、これからはもうちょっと時間を短縮できるでしょうけど」

「まだ挑む気か」

「それはもちろん。内部ではそこそこ負荷がありましたからね。領域スキルは必要です」


 それに探索している間、領域スキルからモンスターが逃げていたからな。あれは私だけではなく、領域スキル持ちは全員そうだったようだ。だから、ある意味安全は確保されている。

 ただ、エルルとサーニャは……いやもちろんいてくれると助かるし心強いんだが、最初の突入がな……。エルルはある意味絶対通る場所にいたからまだいいとしても、サーニャがな……。

 ルイルはもちろん絶対連れてこれないし、耐性が低いメンバーもちょっと困るか。いや、ルシルは耳が良いから、エコロケーション系広域探索をするなら逆に合流しやすいかもしれないが。


「……。まぁ、人手が必要なのも分かりましたから、竜族部隊の人達には可能な範囲で参戦してもらいましょう。この1回のクリアで足りるかどうかも分からないんですし」


 何せ、広大な谷だったからな。これであの柱みたいになってたところまで地面が出てくるならともかく、柱の直径が増えるだけって可能性もある。次の柱に行くには直径10mは欲しいのだそうなので、たぶんもう何回か挑戦する事になるんじゃないかな。

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