第2491話 73枚目:壁突破

 どうやら陽炎のようなものの壁が1ヵ所でも壊れれば召喚者特典大神の加護での連絡が取れるようになるらしい。というのを、雑談掲示板の更新が再開したという形で知って、即座にメールを送信。

 その数分後には司令部が更新する全体連絡スレッドに、構造物の耐久度を上げるモンスターの存在について書き込まれた。ははは。他の掲示板で悲鳴が上がっている。

 というかこの悲鳴、先行して突入した召喚者プレイヤーが書き込んでないか。これ、この書き込みとか。いくら殴っても壊れないと思ったら!!! ってやつ。


「まぁ戦えているならいいんですけど」


 陽炎のようなものの壁の内、最初の1ヵ所が壊れるまでにかかったのは半時間ほど。かなり早いと言えるだろう。ベテラン勢の一部が残っていたし、最初の1ヵ所に全力を突っ込んだんだろうけど。たぶん司令部も、どこか1ヵ所壊れれば連絡が取れるようになる筈だって予想してたんだろうし。

 それに、極論1ヵ所でも突入できるようになれば奥へ進む事は出来るようになる。陽炎のようなものの壁の内側から召喚者プレイヤーと住民が全員引き上げてしまうとあの超広範囲高火力の攻撃がまた来るかもしれないから、最低限ログアウトと召喚者プレイヤーの常駐できる拠点は必要だ。

 で。そこまで作るのなら防衛拠点になるし、堅牢な砦になるだろう。そしてそこまで作るんだったら、転移ポイントを設置するのはそう難しくない。というか、ほぼ最初からセットだ。領域スキルを維持する為の儀式場まで含めて。


「お、カバーさんから返信がきましたか」


 そしてそこまでするんだったら、その建築予定地は。と思ったところでカバーさんからのメールが届いた。そこには、まぁ予想通りというか予定調和というか。

 私が突入してそのまま領域スキルを地下まで展開し続けていた場所に拠点を作るチームが向かうので、その場を動かないで下さい、って内容が書いてあった。まぁそうなるよな。

 領域スキルの出力もあるし、後は地味に種族特性。常に精霊さんと一緒という状態だと、力場的除染が早いらしいんだ。それもそうか。土地を取り返す工事は精霊さん主導だし、その辺精霊さんが得意なのは間違いない。


「ちぃ姫さん見つけたッス! 予定地到着! 建設工事を始めるッスよ! ブモー!!」

「「「おー!!」」」


 そして建築関係で一番仕事が早くて確実なのは、みのみのさんの『牛肉工務店』だからな。しかしまーしばらく見ない間にますます筋骨隆々になってるじゃないの。半人半牛のままだけど。今の種族は何ていうんだろうか。

 なお道中、文字通りモンスターどころか構造物まで撥ね飛ばしていたような気がするが、移動しながらの戦闘だったからそう見えただけだと思いたい。実際撥ね飛ばしてても納得しかないけど。

 まぁその建築の腕前は確かなので。あっという間に砦が出来たので、私はそこで変わらずに待機だ。領域スキルを維持する方が大事だからな。


「儀式場が出来たらそこに移動して、領域スキルの展開範囲を広げる、という感じでいいんでしょうか?」

「はい、そういう方向でお願いします。ここを起点にしてあの壁の内側に、こちら側の壁を作ってしまう予定です」

「防衛ラインを押し上げると共に、これ以上下がるとあの一撃が来るという目印ですね」


 で、その辺りでカバーさんが合流してくれたので、軽く予定を確認だ。まぁそうだな。地図に印をつけていても、戦闘中とかだと確認するにも限界があるし。そもそもこの場所まで下がるって事は、撤退戦である可能性が高い。

 後は分かりやすい壁ではあったからな。段階を1つ進めた位置、という意味でも、はっきりした目印を兼ねた守りやすい場所は必要だろう。何せ、相手のリソースは底なしが定番だ。

 忘れてないからな、海水で無限回復になった「眠り忘れる外法の禍川」が、最後の壁を壊したらエリア全体を取り返したのを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る