第2488話 73枚目:壁の越え方

 その場で待機しつつ、球状に展開している領域スキルの中心点をじわじわ相手の領域へと押し込んでいく事、えーと2時間ぐらいか。

 流石にさっき一度至近距離まで迫っているからか、他の召喚者プレイヤーも多くが陽炎のようなものの壁があった場所の手前に辿り着いたらしい。2度目は早いって言うのは当然の話だな。

 そもそも召喚者プレイヤーには大神の加護がある(という設定な)ので、集団でその場にいるだけで多少力場的除染が進むのだ。神の力を借りたアビリティを連打していれば、そこにもいくらかは神の力が残っていくし。


「さて、今この場にいる戦力の大部分は、壁があった場所の手前に辿り着いたようですが。このまま待機と攻撃を継続するんでしょうか」


 と思いつつも領域スキルを押し込んでいくと、端に開きっぱなしだった司令部が更新する全体連絡スレッドに書き込みがあった。

 それによると、どうやら踏み込むというのは土地に触れる事であり、召喚者プレイヤー及び大神の加護を分け与えられたテイム状態にある住民が直接触れなければいいらしい。何の事かって言うと、魔法や攻撃は当然セーフとして、空中に浮いてればあの陽炎のようなものの壁は復活しないそうなんだ。

 なおかつ、どうやらあの、最初に踏み込んだ召喚者プレイヤーに話を聞いたところ、その踏み込んだ召喚者プレイヤー本人は陽炎のようなものの壁の内側に取り残されたとの事。1人で先行したので、残念ながらモンスターに袋叩きにされて死に戻ったらしいんだが。


「……やっぱり、内側に踏み込んだ状態で、陽炎のようなものの壁を外から壊すのが正規ルートでしたか……」


 どうやら司令部が確認した限り、その召喚者プレイヤーが頑張った時間+最初の一撃が発生するまでの時間=2度目のあの攻撃が発動するまでの時間、だったらしく。内部で召喚者プレイヤーないし住民の仲間が頑張っている限り、あの攻撃は発生しない、でいいらしい。

 もちろん陽炎のようなものの壁が相応の手段を使えば削れるのは分かっている。幸いというべきか、陽炎のようなものの壁に後ろを塞がれても特に力場的負荷や状態異常の積み込みが発生する事は無かったそうなので、多少はやりやすいだろうか。


「奥に進むとそういうのが追加されるだけのような気がしますね」


 というのはともかく。

 司令部によって戦力の一部は後退、陽炎のようなものの壁破壊の為に待機する事になり、それ以外の全員で、空中を経由して陽炎のようなものの壁の向こう側に突入。

 司令部の合図で地面に着地して陽炎のようなものの壁を出現させ、外から破壊。完全に障害を排除して、奥へ進めるようにする、との事だった。まぁそうなるよな。


「まぁ既に領域スキルの中心点は奥に押し込んでいますし、そこに追いつくだけですから何も問題は無いんですが」


 ただ、陽炎のようなものの壁だからな。そこに領域スキルが入っていると、いらないダメージを食らいそう、というのは気にし過ぎだろうか。

 その辺はまだ未検証なんだよな。最初に踏み込んだ召喚者プレイヤーは領域スキル持ちと一緒に行動していただけで、領域スキル持ちは特に何も言っていないらしいんだが。

 とりあえず、空気の足場を蹴ってある程度移動してからだな。それに合わせて領域スキルの範囲を動かして、完全に陽炎のようなものの壁の内側に入れてしまえばいい。


「まだ力場的除染は済んでいない気配がしますが、あの陽炎のようなものの壁がある場所は領域スキルだけだとどうにもならない気もしますしね」


 それに、その内側を少しでも力場的に除染しておくのは大事だろう。私の領域スキルはその出力も範囲も広いからな。

 後は内側に領域スキルを展開しておいた方が、いざという時の避難所にもなるだろうし。何せ退路が断たれているからな。思っているより厳しいんだ、後ろに下がれない戦いって言うのは。

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