第2430話 72枚目:お代わり終了
そこから1時間ぐらいお散歩()を続けていた訳だが、やっぱり結構なリソースを削る事が出来ていたらしい。
「普通は出れないものだった気配がしますね……」
何故ならある大部屋を焼いたところで炎が消えて、大部屋の真ん中に光り輝く魔法陣が現れたからな。何事だと警戒したんだが、光るだけで何が起こる訳でもない。しばらく様子を見ても何も起こらなかったから、その魔法陣を調べてみたんだが。
【鑑定☆☆】すると、シンプルに「脱出用魔法陣」って名前が出てきたんだよな。説明もとてもシンプルで、「脱出する為の魔法陣。乗れば起動する」のみ。手抜きかな?
ま、だからさっきの呟きになるんだが。私が余剰リソースを焼き尽くしてしまったか、それともレイドボスが「こいつは外に戻した方が平和」と判断したのかは不明だ。
「まぁでも、他に出来る事がある訳でも無し。空間的に完全隔離されていたら流石にティフォン様の炎でも届きませんし、大人しく戻っておきましょうか」
「ピュィ」
という訳で魔法陣に乗ると、一瞬視界がホワイトアウトした。と思えば、次に見えたのは、回避不可能の空間の穴に飲み込まれた工事現場近くだ。遠目に……たぶん一回りぐらい小さくなって、周囲にみっしりモンスターが出現している、真っ黒い綱で出来たドームのようなものも見える。
どうやら工事は再開していたらしく、動いていた人達が目を丸くしていた。とはいえ冷静な人もいたようで、すぐ司令部の人が来て事情を聞かれる。もちろん素直に答えた。奇跡を願い、脱出用魔法陣が出るところまで。
なるほど。と納得してくれた司令部の人はそのまま司令部とやり取りをして、私には、灯りの奇跡を維持したままある場所に行ってほしい、と伝えてきた。
「え、あの空間の穴、そのまま残ってるんですか?」
「はい。どうやら一定人数を吸い込まないと閉じないようです。発生の瞬間、避難した人数が多い場所はそのままとなっております」
そういう事らしい。そうなんだ? という事は、中と外で連動というか、協力する形の何かだったんだろうか。
ただ司令部の人曰く、あの空間の穴が出現した後辺りから、イベントダンジョンの同時突入可能数が一気に減ったらしい。だから恐らく、残った空間を出来るだけ攻略されないようにしているのでは、という事だった。
その分だけ通常空間にモンスターが出てくるのは変わらないし、野良ダンジョンの発生ペースは変わらないどころか徐々に上がっているぐらいなので、ちょっと攻略を急ぎたいようだ。
「なるほど、イベントダンジョンの連続攻略ではあった訳ですね」
「そのようです。まだ強制突入者の内帰還できたのはちぃ姫さんだけですが、一気に攻略数を稼げば戻ってくる人数も増えるかと」
「分かりました。向かいます」
という事で、一旦灯りの奇跡は終了してから大神殿なんかを経由して言われた座標に移動。穴に突入する。ただひたすら歩くだけなので、ルイシャンはうちの子への連絡をお願いした。
一応灯りの奇跡による炎を穂先に灯した状態で吸い込まれたのだが、大部屋に入った時点で炎は消えていた。外から持ち込むのはダメらしい。
「とはいえ、中で願えば大丈夫なのが分かってますしね」
なので今度もかなり全力で領域スキルを展開し、灯りの奇跡を願う。……さっきより炎の大きさ自体は小さいが、点いたから良し。
後は一緒だな。大部屋に入ったらその時点で部屋ごと燃えるから。大きな扉が燃え尽きて、その向こうにもしっかり炎が走ったのを確認してから次の部屋に行けばいい。後でティフォン様にお礼の捧げものしないとなぁ。
にしても、こっちでも時々壁とか床とか天井とかが燃えるのは変わらないのか。いや確かに同じイベントダンジョンだし、構造は変わらないのかもしれないんだけど。
「一応司令部の人にも伝えましたが、あの燃えているのは結局なんなんでしょう」
まぁ報告はしたし、その内検証班辺りがその正体を割り出してくれるだろう。今は大部屋を焼いていくことに集中だ。
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