第2429話 72枚目:黙々攻略

 いやぁ、今日も悪人面なイケオジ絶好調のようだ。きっと良い笑顔に違いない。

 と、私が確信する程度には、大部屋及びそこにひしめいていたモンスターは盛大に燃えた。大きな扉も燃えていたし、どうやら燃え尽きると勝手に次の大部屋に炎が伝わっていくらしい。

 一応イベントダンジョンという扱いなのか、私が次の大部屋に入るまでは大きな扉も出現しないようだが、完全に燃え尽きた後で大部屋を移動すると、灯りの奇跡を維持する魔力がぐっと減るようだ。


「カード化した松明は減らなくなったので、実質無限に攻略できるようになりましたね……」

「ピュイ」


 まぁ減るだけでというか、減ってもなお結構な量の魔力は持っていかれるのだが。カードの消費が無くなって、しばらく待てば回復する魔力だけで攻略が進められるなら、破格だろう。

 という事で、私自身はのんびりとお散歩ペースで大部屋を移動していくだけとなっている。うーん。モンスターがとても盛大に燃えている。悲鳴がすごい事になってるな。

 ただちょっと疑問なのは、時々、大部屋1つにつき2ヵ所か3ヵ所だろうか。床や壁が燃える場所があるんだよな。そこにモンスターがいるとかじゃなくて、それこそ追加条件で突入したダンジョンの、色違いになっている部分ぐらいの大きさが明確に燃えている。


「……何か仕掛けでもあったんですかね。ティフォン様が燃やすのですから、まず私達に有害なものなんでしょうけど」


 フラグの踏み倒しは仕方ないものとする。そのせいで他の召喚者プレイヤーや住民の仲間と合流できない気もしなくはないが、仕方ないものとする。知らない間に状態異常を積み込まれてるとかもあり得るから。

 実際、領域スキルの展開負荷もかなり楽になってるからな。そして自然回復力を鍛えるために領域スキルにリソースをつぎ込むと、灯りの奇跡の炎がより広がりやすくなる訳だ。

 ま、少なくとも臼がオリジナルとなるレイドボスのリソースはとても順調に削れているだろう。通常空間では大量のモンスターが出現しているかも知れないが、「第四候補」の補助が入る「第二候補」がいるなら、いくらいたって問題ない筈だ。


「どっちかというと、私がいなくなったって事による皆の動揺の方が酷そうですね……」

「ピュー……」


 そうか、ルイシャンもそう思うか。でも今回の分断は逃がす気が無かったからなぁ。敢えて受けて立った部分が無いとは言わないけど。

 とかいう感じで、私とルイシャンは非常にのんびりと大部屋を進んでいく。しかし光景が変わらないな。相変わらず、ところどころ壁や床が燃えているようだし。いや、天井もか。

 大部屋の中の一部がランダムで燃えるって事はそこに何かあるって事なんだろうが、燃えてる時点で既に「敵を滅ぼす」特性は発動している。つまり、ステータスの暴力による良い視力で狙いをつけても【鑑定☆☆】が発動しない。


「ま、元々【鑑定】が通らないものであって可能性もある訳ですが」


 奇跡を維持した状態で攻略を続けているからか、なんかこう、全力で遠回りさせられている気がしない事も無いが、その分だけレイドボスのリソースを綺麗さっぱり燃やし尽くすもとい消費させられるならそれでよし。

 灯りの奇跡による炎がちゃんと毎回大部屋全体を走るって事は、この大部屋を使いまわしてるって訳でもないだろうし。大部屋の数だけ何かしら削れているのは間違いないんだ。

 どんな形にしろリソースが削れれば、それは他の場所への援護になるからな。モンスターも相当数を毎回焼いているし、あの大きな扉もちゃんと焼け落ちている。文字通り跡形残さず。


「私を迂回させるリソースが尽きたらそれがそのままレイドボスの終わりになるような気もしますが。まぁこのままのんびりと行きましょうか」

「ピュィ!」


 場所は変われどお散歩は変わらずだな。敵の陣地の中で奇跡を願ったって時点で怒られそうな気はするけど。

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