第2408話 72枚目:最後の1種

 大規模魔法や地形を変えるレベルのアビリティがこれでもかと叩き込まれれば、モンスターの群れだってその内終わりが見えてくる。外なので足元は大変な事になっているようだが。いや、逆に高火力攻撃が叩き込まれ続けて、何も残ってないか?

 ともかく、えーと、今がリアル水曜日の夜で、魔法陣が出てきたのがログインしてから内部時間で5時間ぐらいした頃で、今残りログイン時間が6時間だから……それでも1時間ぐらいなのか。召喚者プレイヤーの火力も上がったな。

 ともあれ、どうやら魔法陣は完全に消えるところまでいくらしく、一旦通常空間でのモンスター召喚は止まった。……とはいえ、司令部らしい召喚者プレイヤーがイベントダンジョンに突入して出てきて、綱が勝手に切れると、案の定再び魔法陣を構築していたが。


「とはいえ、魔法陣もそれぞれ独立している状態であればまぁどうとでもなります」

「なってるか?」

「あのぐるっと全体を囲んで魔法陣が存在している時よりは絶対にマシです」

「……まぁ、それはそうか」


 どうやら今の所突入できるのは人間種族だけらしい(その中でも細かく分かれているらしいが)ので、それ以外の種族の召喚者プレイヤーと住民の仲間は、通常空間で待機してモンスターの迎撃だ。私もルイシャンに騎乗して、あちこちに応援に行っている。

 ただそろそろ世界各地に出現する野良ダンジョンの攻略が間に合わなくなりつつあるという事なので、竜族部隊の人達のうち、半分はそちらに回ってもらった。クリアした分の報酬は持って行っていいルールなので、ちょっと喧嘩が起きかけたのは別の話だ。

 で。この段階になった状態のイベントダンジョンにおけるクリア報酬っていうのは、どうやら、突入コストとして使える、星の絵が描かれただけのカードらしい。うん。まぁ。来るとは思ったけど。


「……揃って、しまったんですよね」

「どうした」

「今の段階になってからの、突入、突破報酬です。手に入れた時はカードの状態で、星の絵が描かれているだけの、名前も無いカードなんですが……」

「あぁ、あれな」


 それだけなら問題なかった。それだけなら問題なかったんだが……最初に手に入れたのは検証班だったらしく。それを、このイベントエリアの外に、持ち出してみたらしいんだ。

 そうしたら、他のカード化したアイテムと同じく、カウントダウンが表示された。という事は何か別のアイテムになる、というか、本来の形に戻るんだろうって事で、カウントダウンそのものは半時間というとても短い時間だったそれを、最前線がモンスターの群れ迎撃でてんやわんやしている間に、観察していたらしいんだが。



 そのアイテムっていうのが、結晶の形をしてて。

 しかも名前が、「対価無き宝の残滓」だったんだよなぁ……!!



 そうだよ。やっぱり出てきたんだよ、もう1つの用途不明アイテム「残滓」が!

 しかも手に入れたのが精霊魔法を持たない検証班の召喚者プレイヤーだったって事で、たぶんというか間違いなく「朽ちた財貨の夢」と対になってるんだよ!!

 追加の「夢」アイテムは精霊さんからのプレゼントだったが、今度はイベントダンジョンの攻略報酬っていうのが良く分からないが、これで「膿み殖える模造の生命」の時に出てきた用途不明アイテム、全部揃ったんだよ! 星金と「夢」アイテムと「残滓」アイテム!!


「相変わらず用途は不明ですが……「夢」と対になる形の、「残滓」アイテムだったようで……」

「…………あれか……」


 うん。流石にエルルも頭が痛そうだな。それはそう。

 本当にこれ、一体どうやって使うんだろうな? いや今このタイミングで最後の1つというか1種類が出てきたって事は、恐らくラスボスだろう“呑”むと戦う時に使うだろうけど。

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