第2407話 72枚目:段階状況

 突入先のイベントダンジョンは、とりあえず今の所突入する種族に制限がついているようだ。もちろん内部の広さは完全にクラン向けであり、パーティでは時間がかかり過ぎる。

 とはいえ、どうやら神の力を込めたアイテムをカード化して持ち込むと大部屋になる。この仕様は生きていたらしく、突破そのものはどうにかなりそうらしい。

 ただちょっと困ったのが、イベントダンジョンの攻略数が増えると、そのたびに湧いてくるモンスターの数が劇的に増えるって事だ。この増え方はちょっと尋常ではない。何せ私が精霊さん達に壁系魔法の迷路を作ってもらって、それでも抑えきれてないからな。


「お嬢」

「どうしました?」

「前から問い合わせだ。召喚者が突入を一旦止めたようだがどうしたと」

「司令部からの指示ですね。どうやら、空間側の攻略が進み過ぎたせいでこの大量出現になっているようですから」


 今回のレイドボスは、ほぼ1体になっているが、厳密には2体セットだ。そして2体セットのレイドボスの場合、両方を同じくらいのペースで攻略していかないと痛い目を見る。お約束だからね。面倒だけど。

 で。このモンスターを召喚しているのは演出時点で分かる通りに綱の方になる訳だが、どうやらイベントダンジョンのクリアで削れるのは推定臼の方だけらしい。しかもほぼ最短で報酬を取りきっていたから、削れ方に差がついてしまったようだ。

 なのでしばらくはモンスターの討伐に力を入れて、綱の方を削って進捗を合わせる事にする、と、司令部更新の全体連絡スレッドに書き込みがあったからな。住民の仲間への伝達はワンテンポ遅れたんだろう。


「モンスターを倒すだけで本当にいいのか?」

「魔法陣の面積と、魔法陣を構築している綱だったものの厚みが、モンスターの召喚数に応じて減っていくのは確認されているようです」

「なるほど」


 なおその減少率は例によっていつものごとくってやつなのだが、それはまぁ、火力を上げればいいだけだし。実際、領域スキルが展開されていたり、あるいは大技の練習を集団で継続したりしている場所は、かなりモンスターの撃破ペースが速い。

 相手の大きさが大きさだし、その周囲に魔法陣が展開してモンスターが出現する都合上、どうしても戦場は広くなっているが、ギリギリ対応は出来ている。設置する事でダメージゾーンを設置するお札もだいぶ広まったからな。モンスターも強くなったから、それだけで倒せるほどでもなくなったが。

 それでも、領域スキルと併用すればかなりのモンスターが勝手に倒れる事になる。体力は低いが素早いタイプのモンスターが前衛をすり抜けて後衛を襲って、そこから瓦解する、っていうのもある程度防げるし。


「とはいえもう少し火力が欲しいところですね。という訳で! 魔力の供給を開始します!」

「助かる!」

「ちぃ姫さんきゅー!」

「巻いていくわよ!」


 それはそれとして、受け手の上限を2割、供給元の下限を7割として、魔力の供給能力を開放するんだけどな。どうやらどこでモンスターを倒しても魔法陣は平均的に縮んでいくみたいだし、モンスター自体も外へ行くより周囲にいる召喚者プレイヤーや仲間を優先するみたいだから。

 司令部はたぶん、ここで一度モンスターの召喚ペースが一定数を切るか、それこそ魔法陣が無くなってモンスターの召喚が止まるところまで削っておくつもりなんだろうな。イベントダンジョンの攻略の方は、例によって大部屋に変えて時短するんだし。

 一回出現数を減らしておけば、壁系魔法なんかをがっつり用意する事である程度勝手にモンスターを倒せるようになるからな。そうやってからイベントダンジョンの攻略数を稼ぐ方が、人数と移動時間的な意味で効率がいい筈だ。たぶん。

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