第2385話 71枚目:イベントリザルト

「……これは、そのまま使うとどうしようもないわね。他のスープを作って混ぜて、その上で色々使うのがいいと思うわ。ある意味基本の出汁みたいなものだし、そういう方向ならいくらでも使えるから任せて」


 流石うちのメインコックさんだ。最初はともかく後半とても頼りになるし、実際そこから大量のとても美味しくて回復するご飯を作ってくれたからな。なお大元の薬膳スープは、半分くらい分霊が食べていった。

 なお私が本命として作っていたジャーキーについては、私が責任をもって全部食べるという方向で決着がついた。大丈夫。こっちは、お腹ははちきれかねない、なんて説明はついてなかったから。


「お嬢」

「姫さん」

「……何でしょうか」

「なんだこの「空腹継続回復」っていうのは」

「ついでに、その強度が10って書いてあるようにも見えるんだけど?」

「わ、私達は空腹が加速する代わりに、回復力を上げられますし」

「元々の回復効果だけでも十分だと思うが……」

「というかこれは姫さんじゃなくてボクらが持つべきじゃない?」


 ……決着がついた筈だったのだが、エルルとサーニャに9割持っていかれてしまった。せっかく自信作だったのに。すごく美味しい、噛めば噛むほど味が出てくる良いジャーキーになったのに。

 というのはともかく。ひたすらに消耗品、“呑”む由来の状態異常対策になる過剰回復用のポーションや料理を作りまくり、何なら倉庫の素材を一旦空にするぐらいの勢いで生産作業を続けて、イベント期間は終了となった。時間加速があったのもあってほんと長かったな。

 で、イベント期間が終わったという事は、リザルトが届いてるって事だ。なおイベントエリアにあったステージは無事全て完全攻略されているし、最後まで残っていた四隅のステージも、一度は平和的に(?)全員が追い出される、というところまで行っている。


「……うちにいる分霊が両方とも、食べる勢いが一気に加速した瞬間がありましたが、あれがたぶんクリアの瞬間だったんでしょうね……」


 という推測はあるが、まぁともかく。薬膳スープを一口食べては動きを止め、だったのが、器に口をつけて飲んでたからちょっと慌てたのもともかく。何とかなったので良いとして。

 とりあえずリザルトを見に行くが……まぁいつも通りだな。ランキング報酬は「加護の水晶」とかだ。モンスター討伐数と大型モンスター討伐数が別なのは恐らく小粒のレイドボスステージボスなんだろうし、それは通常報酬と高級報酬で途中から建材になってるからいつも通り。

 素材はルージュ達に渡して、建材は個人で建てた神殿に突っ込んで、後はまだまだ消耗品の生産作業か、と思いつつ最後の全体報酬を見ると。


「……?」


 それはシンプルな「イベントステージクリア率」という名称だ。まぁあるだろうなとは思ったけど。カテゴリ的には、エリア踏破率とかと一緒だろうし。

 時間制限なしだった四隅のイベントステージを何度か完全攻略(仮)した影響か、その数字が100%を越えてたのは良いんだ。ちゃんと土地を取り返すところまでやったら、踏破率も100%を越えてたし。

 ただその、10%刻みで出てくる報酬が、110%からは建材っていうのはまぁいいとして。


「100%時点の報酬が、カードケース?」


 なお、現在の所フリアドで「カード」に類するアイテムは無い。類似のアイテムと言えばお札があるし、トランプを使ったりするアビリティはあるものの、こう、カードゲームのように使うタイプのカードは、実は無かったりする。

 まぁわざわざカードの形にしなくても似たようなことは出来るし、変身アクセサリは一旦出来上がったからな。もちろん作っている人はいるだろうし、探せば見つかるのかもしれないが、少なくとも私は知らない。

 にもかかわらず、全体報酬、つまり確実に大半の召喚者プレイヤーが手に入れられる形で「カードケース」が出現した。という事は。


「……ダンジョンを作るタイプのレイドボスが揃った状態でカードケースとか、嫌な予感しかしないのですが……!!」


 次のイベントで使う、って、事だよなぁ……。

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