第2368話 70枚目:次の段階

 どうやらちゃんと魔法陣は発動されたらしく、勝手に進む先の部屋に柱が現れて、勝手に崩れて、勝手に鎧付きモンスターが出現するらしい、というのが分かった。

 ただ柱が崩れるのはともかく、鎧付きモンスターには領域スキルのスリップダメージは通らない。とはいえ、何の工夫も無しに私が殴ったらそれだけで壁まで飛んで行って崩れ落ちたから、領域スキルの展開範囲はそのままだが。


「むしろあのうるさい足音で小部屋の場所が分かるという」

「利点が出来てしまったであるなぁ」


 なお鎧付きモンスターは迷路の中にいる召喚者プレイヤーのところへ向かって来るらしく、通路でも迎え撃つ事が出来た。なおかつ廊下で撃破すれば、鎧がブロックに戻って転がっていく間に壊せる。

 そんな調子なので、天井もあちこち穴が開いている状態だ。床に穴が開いている小部屋には柱が出現しないので、しばらく待機して鎧付きモンスターを出現させ、その足音が全部こっちに来ることを確認してからはさっさと移動するようにしている。

 とはいえ、空間をいじる能力で閉じ込められているんだから、他の召喚者プレイヤーや仲間がいれば、割と近くにいる筈だ。小部屋がどこにあるのか分からないのもあって、鎧付きモンスターも1階層につき3から5体は倒している。だから、救出し損ねた、って事は無い筈なんだが。


「で、恐らく次の節目に来た訳ですが」

「いい加減この音もうるさくなってきたであるな」

「同感ですけど、こっちの方が効率良いですし」

「それはそうである」


 で、21階層目。結局ここまで他の召喚者プレイヤーに遭遇する事はなく階層を登り続けてきた訳だが、ここに来たら、隠し通路を構築しているブロックの壊れ方が、バキバキからガガガガガになった。いやまぁ、耐久度が落ちればそうなるだろうけど。

 これは動かない方が良さそうだ、と判断して、しばらく領域スキルを通路に沿って展開していくだけにする。仕掛け的には同じなんだろうけど、すごいな。というか、どこかでこんな光景を見たことがあるような。

 ……あぁ、あれか。あれだな。御使族がいる聖地の島を開放する時のレイドボスで、迷路の中を焼き払ってから水を流し込んで攻略したやつ。あれだ。


「しかしこの勢いだと、鎧付きモンスターの発生数がすごい事になる気がしますが」

「まぁ仕方あるまい。1部屋につき1度しか出現しないのだ。大丈夫であろう」

「……天井の穴も増えますけど、本当に大丈夫だと思います?」

「……そも、空間をいじってあるであるからな。ここも相手のリソースではあろうし、削れるだけ削るのは良い事であると思うが」


 そこで目を逸らすあたり、あんまり大丈夫だとは思ってないんだな? いやまぁ確かに、敵のリソースは削れる時に削れるところから削るものだけど。

 空間をいじっている以上、どれだけ広範囲を探索して壊したところで脱出の道が無くなるって事はないだろうけど。それは分かるから私も領域スキルの展開範囲を広げ続けているんだし。


「……。鎧付きモンスターの足音がこっちに来ませんね?」

「むしろ遠ざかっているであるな?」


 なんて考えがよそに行っていると、ここまでと違う事が起こっている事に気付いた。鎧付きモンスターは召喚者プレイヤーの方に向かって来る。で、私達以外の方向に向かっている、と、言う事は。


「「第一候補」、走れます? それとも担ぎます?」

「我は後から追いつく故、「第三候補」が先行すると良い」

「分かりました」


 他の召喚者プレイヤーがいるって事だな。あの揺れの時点で中心近くにいたんだからベテラン勢だろうし、対処は出来るだろうが、それでも急いで合流した方がいいだろう。

 っていうか、よく耳を澄ませたら鎧付きモンスターっぽい足音があっちこっちに散っている。あれ? 何かいきなりこう、人数が増えたな?

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