第2347話 70枚目:ギミック進行?

 で、再編成された探索班が出発して、1時間後。


「……何か出てきましたねぇ……」

「言ってる場合か! 流石にちょっと下がれお嬢!」

「儀式場があるので無理です。防御張って耐えますので迎撃を」


 たぶん、突入組が突入出来たんだろうなぁ……。とちょっと遠い目をしながら見る先では、「狂い崇める外法の禍壁」の本体だろう巨大な柱から這い出るようにして、ここまでのステージで出てきた小粒のレイドボスステージボスが出現していた。

 それもがっつりと全身を構造物の鎧で覆って、一度に何体もだ。同じシルエットの奴はいないから、複数のステージに同時突入したんだろうか。それともあるいは……複数の見えているステージの内、「突入しなかった」ステージの分が出現しているんだろうか。

 まぁその辺の詳しい解析は司令部と検証班に任せるとして、問題はあいつらが全身鎧で固めてるって事なんだよな。中には不定形なやつもいるんだが、その場合はこう、蛇腹とかスケイルメイルとか、そういう形になるらしい。


「不定形の奴は体を伸ばしたところを狙うとして、クリティカルによる即死は通るっていうのが分かってて良かったですね」


 なお、鎧を着こんでいる場合はしっかり領域スキルの効果も減衰する。たぶん魔法の座標指定が出来ないのと一緒で、外からの影響を遮断する力が強いんだろう。そうだな。領域スキルも「外からの影響」ではあるし。

 まぁそうやって、遮断する方向に力を入れてくれているからか、例外なく全身を鎧で覆った小粒のレイドボスステージボスが領域スキルの範囲内に入っても、劇的に負荷が上がったって事も無いのは助かったな。これ以上負荷が上がったら、ポーションを飲みまくる事になるだろうから。

 しかし、と。実質鎧を攻略する為に時間をかけている前線の戦闘から、少し視線をずらす。その先にあるのは、「狂い崇める外法の禍壁」の体力バーだ。


「……あれだけ新手が出てきても減ってませんね」


 その下段の青色は、残り8割半といったところ。つまり、領域スキルを重ねたことによるダメージしか入っていない。少なくとも、小粒とはいえレイドボスをあれだけ、それも鎧付きで召喚しておきながら、目で見える程体力を消費している訳では無い、って事だ。

 となるとあんまり考えたくなかったが、通常攻撃と同じ枠の取り巻き召喚なのだろう。雑魚モンスターを山ほど召喚するのではなく、格が低いとはいえレイドボスを何体か出す。まぁ、現状確かに、そちらの方が苦戦しているんだが。


「というか、雑魚モンスターだと相手にならないというか、ステータスを上げる餌扱いになりますからね。方法を変えるのも当然でしょうか」


 コンボ系とか、一定時間で倒したモンスターの数でかかるバフとかだな。それこそ「吸血」系統の正しい使い道とかだと、雑魚モンスターがいる限り回復し続けるっていう状態にもなる。

 数で押すモンスターを有効活用する手段はともかく、ベテラン勢を筆頭とした召喚者プレイヤー勢の火力平均も相当に上がっている。だから雑魚モンスターでは足止めにもならない、のは確かなのだ。

 それに、地味に【解体】の普及率も上がってきているらしく、乱戦だと足場が大変な事になる。それが解決するというか、片付けの時間が取れるのは助かるんだよな。


「大変でしたからね……モンスターの群れを乱戦状態で迎撃すると、主に足場が……」


 だから余計に、地面が無くても戦う方法が普及したのかもしれない。数センチでも浮いた状態で動けたらだいぶ違うからな。そういう状態になるから、ボックス様の「敵を与える」奇跡と収穫祭の踊りの組み合わせがありがたがられたんだし。

 とか思っていると、私が展開していた防御に何かがぶつかった。おっと。


「お嬢、無事か!?」

「大丈夫です。まぁ数が増えればこういう事も起こりますよね」


 それはどうやら、斬り飛ばされたいずれかのレイドボスの一部だったようだ。どこの部位か分からなかったし、判別する前にエルルに更に斬られて遠くへ(鞘で)殴り飛ばされてたから正体不明だが。

 うん。戦闘自体は割と順調だな? 相変わらず領域スキルによるダメージが入っていて、それで回復行動より攻撃を優先するみたいだし。そこはここまでの鎧付き取り巻きと変わらないんだな。

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