第2345話 70枚目:周辺状況
さて。戦力を分けて、それプラス「第二候補」を始めとした遊撃部隊、まぁ「狂い崇める外法の禍壁」の周りを自由に動ける組だな。ある基準で編成された集団を作って、行動開始だ。
「で、お嬢」
「まぁ負荷は想定内ですし」
領域スキルの展開負荷については、まぁ、分かってたことだしな。これでも一応『巡礼者の集い』や『可愛いは正義』の人達によって可能な限り儀式場が整えられ、なおかつセット装備の効果でステータスが加算されて、だいぶマシになっている(筈)なんだが。
それでも無事にレイドボス「狂い崇める外法の禍壁」は効果範囲内に捉えられたし、「第一候補」の方も同様だろう。という事は、あの巨大な柱の姿をしているレイドボスの周辺は、領域スキルが重なっているという事だ。
もちろん取り巻きのモンスターはそれぞれの領域スキルの展開者へ攻撃しようと寄ってくる訳だが、エルル達が通す訳がないんだよな。……どころか、どうやらルシルお得意の関節などの弱点部位+クリティカルによる即死は通るらしい。
「しかも通った場合は、鎧が多分ですけど3体分ぐらい減ってませんか。そして回復行動の前に領域スキルでダメージが入るから、結果として回復行動より攻撃を優先するという」
思ってたより楽に行ってるなら問題は無いな。結果として、攻撃開始2時間時点で残っているのは、司令部の方で残すと決まった巨大スケルトンだけだ。それもあまり大きくなりすぎないように、適宜削られているが。
で、2時間かけて領域スキル+遊撃部隊の攻撃余波+迎撃の余波で「狂い崇める外法の禍壁」の体力バー(下段)が、どのくらい減ったかというと。
「……思った以上に減らないんだが、あれは大丈夫なのか?」
「大丈夫ではありませんが、まだこの場所について分からない事の方が多いですからね……」
残り、9割弱。そう、1割削るのがやっとだった訳だ。もちろん火力を上げようと思えば上げられる。真面目に攻撃すればいいだけだからな。それでもまだ総攻撃に移ってないのは、それより優先する事があるからだ。
それが何かって言うと、この空間自体の調査だな。どうやらかなりの広さがあるようだが、オリジナルの事やここまでの事を考えて、周囲に何も無いとは思えない。少なくとも広さを知っておく事は必要だろうって事で、何組かの調査隊が結成されて出発していった。
一応調査の予定時間は2時間となっている。だから、何も無ければそろそろ戻ってくる筈だ。その結果次第で動きが変わるって可能性も高い。何せ何が見つかるか、全く分からないんだから。
「というか、何が見つかっても厄介だろうという感じなんですけどね。ここまでとオリジナルのひたすら面倒なギミック尽くしを考えると」
「……もうちょっと言い方が無かったか?」
「実際そうじゃないですか」
言い方が、って時点で内容自体はエルルも否定してないからな。つまりそう言う事だ。何も無いと逆に警戒度が上がる程度にはギミック尽くしだっただろ。
なんて会話をしていると、わたわたと人が動き始める気配があった。このタイミングでって事は、調査隊が戻って来たんだろう。どうやら予定通り戻って来れたようだ。……という事は、少なくとも足止め系とか、迷子になる系の罠は無かったって事だろうか。
戻ってこれた、という事からそういう事を推測しつつ耳を澄ます。どこに戻ってきたにしろ、情報は回ってくる筈だからだ。それでなくても全体の空気や零れてくる会話を聞けば、大体分かる時もある。
「…………。エルル」
「なんだお嬢」
「帰って来たは良いが、全員が言っている事が全然違うようなんですよね」
「……。別行動してたのか?」
「全員で固まって団体行動しかしてない筈なんですよ」
「それは……まぁ普通に考えるなら幻覚系の状態異常のせいだろうが」
「状態異常対策はこれでもかとしていったと聞いてるんですよね。ほら、ここは相手の本拠地ですし」
「……まぁ、そうだな」
うん。一筋縄ではいかないと思ってたけども。……どこからどう手を付けていいのか分からない方向できたかぁ。
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