第2328話 70枚目:加算仕様
1時間後。
「よくもまぁ次から次へと増えてくれたものですね。カバーさん、最終的に何体になってました?」
「簡素ですが全身鎧であった事と、それらの主要パーツが分裂式の再生と増殖を行う能力があった事から、最終的に20体になっていました」
「うっわ、あのでかいのがそんなに増えてたの?」
「……部屋が狭く感じる筈だ」
何というか、火力さえあればどうにでも出来る相手を出しておいて良かったよねって感じだな。オーガ系統の巨人系のモンスターの筈なのに、スライムかっていうぐらい元気に(?)分裂してたから。
もちろんその分裂というか、数が増える方向の超回復の原因は当然ながら、鎧の形に変わったあの謎のやつだ。その後に召喚して普通に倒したモンスターはここまでと何も変わらなかったから。
分裂系の再生をさせると、最終的には前だけがある胸当てみたいな形になったので、そこからは楽だったな。とりあえずそれ以外の部分を切り飛ばすか吹き飛ばすか消し飛ばせば良かったから。
「しかしこれは、ルウは続投としてもルシルを連れて来るべきですね。まぁこれが今回の
「そだなー。それに魔法の射程に関する阻害は無いみたいだから、魔法の座標指定が出来れば何もさせずに倒せるんじゃね? 内側からぼっこぼこにすればいいだけだから、ぶっちゃけでかい的だし」
「そうであるな。それに見た限り、数が増えるという特性を生かすつもりがあるのか、関節部分の守りは薄いようである。増える数に対処できればという前提であるが、他の部分を狙うよりは楽であろう」
「鎧は何も効かなくても~、動かしてるのは中身だものね~。ちゃんと狙えば攻撃も状態異常も通るのなら、なんとかなるんじゃないかしら~」
というのが正直な感想だな。「第二候補」? 私のところ以上に戦闘特化な本人と周囲なのに何を心配する事があるんだ。むしろ、早く次の奴を呼び込む為にさっきからガンガン召喚したモンスターを倒してるよ。
なので、とりあえず問題は無いだろう。そう、とりあえずだ。
「ま、鎧に変わるあの人型の数が増えたり、元々召喚するモンスターが厄介だったりしたら話は変わるんでしょうけど」
「あれだな。とりあえずあの、体力が低くて素早い奴だけはダメ。この狭い迷路の中で触られたらアウトかつ攻撃が狙わなきゃ通らないとか、手ぇつけらんなくなる」
「それと~、不定形の相手とか、魔法が効かない相手とか、切る攻撃が効かない相手も止めておいた方がいいわよね~。特に魔法が効かないと、最悪詰むんじゃないかしら~?」
「最低限、素早くない、関節がある相手、ぐらいには限定しておくべきであろうな。そうでなくては召喚者全員を外に出して、状況を最初に戻すぐらいしか出来なくなりそうである」
冷静に考えればダメな場合がいくらでも思いつくぐらいには厄介なんだけどな。あ、あと大きさ制限もしておくべき。一定以上大きくないと、通路を通って逃げ回りかねないんじゃないか? 逃げたり足止めしてる最中に遭遇したら、もうそれは交通事故でいいだろ。
まぁでもちゃんと召喚するモンスターを選べば、どうにでもなるだろうな。増え続けるあの謎のやつを減らす方が優先なんだから、得られる素材は二の次にした方がいい。万一仕留めそこなったりしたら周りの迷惑が大変な事になるし。
そもそも、この迷路の構造物で出来てる(ほぼ確定)って時点で今回のレイドボスの一部って判断していい訳だ。そしてレイドボスは学習するんだから、厄介なモンスターを召喚して鎧付きにする事で、その厄介さを学習されたら戦犯呼ばわりされても仕方ないのでは?
「おっと、うっかり素材を間違えたわい」
ん?
「待って待って待ってちょっと「第二候補」!? 何使った!? 何かこれ、こう、絶対にヤベーって事だけは分かる感じのデカさと光り方の魔法陣出てんだけど!?」
「いやぁ何、そう言えば「第三候補」の所から、鍛錬に良い強さになるだろうといくらか素材を融通してもらっておってなぁ」
「は!? 私は聞いていないのですが、エルルは知ってますか!?」
「え、いや俺もそんな話は……あぁいやあれか? 確か前の前かその前ぐらいの合同訓練で、融通したっつかその時手に入った素材は普通に山分け、して…………」
「第四候補」の確認に、うっかりだなんてとんでもないと自白するに等しい言葉を告げる「第二候補」。そしていきなり私が出てきたが、本当に聞いてないぞ!?
私が把握してないって事はすなわち普段の訓練関係、と判断してそのままエルルを振り向くと、どうやら引っかかる記憶そのものはあったらしい。の、だが。
ねぇエルル。聞こえてるんだよ。その最後のめっちゃ小さな「ヤベ」っていうの。
「……エルル。何が出てくるんです?」
せめて覚悟がしたい。と含めての問いかけ。うん。絶対に碌でもないというか、「第二候補」がとっても楽しそうって時点で、絶対にダメなやつなんだけど。
「…………お嬢達が、鍍金の竜って呼んでる奴……」
「戦犯確定!」
「なんでじゃ! 言うほど素早くなく関節があって、通路を通れるほどの大きさはないじゃろう!? 最低限の条件は満たしておるじゃろうが!」
「基本スペックが高過ぎるんだよ!! 1人で自滅するとしても周りの迷惑になるってのに、俺らを巻き込むな!?」
「その、確か合同訓練って事で、一番元になった奴の筈だから……たぶん何とかなるというか、最悪俺が何とかするし……」
エルルが謎の責任を感じているようだが、今回のこれは「第二候補」が全面的に悪い。とりあえずあれだ、絶対にあの謎のやつが鎧になる前に仕留めないと……!!
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