第2288話 70枚目:召喚結果

 像を設置してその前にお菓子を山にして供え、それを中心にベースキャンプを構築していると、音もなくうちにいる大神の分霊が姿を現していた。

 供えられていたお菓子を食べきったところでお菓子籠を使って誘導し、食べている間に首飾りの説明をして身に着けさせ、この場所についての説明と改善をお願いする。

 この大神の分霊は割と話を聞いてくれるらしく、ちゃんとかみ砕いて具体的に話をしておくとその通りにしてくれやすい。特にやっちゃいけない事、今回は首飾りを着けたまま島に戻ったり、首飾りに分霊基準の汚れを移したりだな。


「まぁ魔力がそれなりのペースで持っていかれるのは想定内として、これって副産物って呼んでいいんでしょうか」

「いいと思いますよ。恐らく価値はあったものの、それ以上の穢れで触れられなくなったものでしょうから」


 で、その内分霊がこの空間に干渉し始めたのか、首飾りがうっすら光り始めたのは良い。今までの勢いだと眩しくて仕方ないから、発光を抑えるように作られてるからな。

 それに応じて空間が軽く揺れ始め、推定で縮んでいくのも想定内。かなり裏技かつ力業に近い干渉をしたせいか、モンスターが出現してこちらに襲い掛かってくるのもまぁあるだろうと思ってた。

 のだが……拠点にしているこの部屋の壁から、この空間で手に入ると報告された様々な鉱物がぽこじゃか生えてくる・・・・・のは驚きだ。たぶん、カバーさんの推測通りなんだろうけど。


「採取活動が捗るメェ」

「質の方も良い感じメェ」


 罠対策要員だった双子が採取要員になってるくらいにはハイペースで。いやまぁ、私だけではなくエルルとサーニャ、カバーさんやソフィーナさん、ルチルまで含めて魔力が高めのメンバーが交代で腕輪を着けて、それでもなおそこそこのペースで消費されてるんだから、それぐらいにはなるんだろう。

 さて問題は、この調子で干渉を続けて、この空間が「クリアできる」形になるかどうかだが……。


「ところでマイマスター、そろそろ斥候を出した方が良いと思うのですが!」

「ニーアさん達に行ってもらっていますので、あなたは待機です」

「隠密行動には自信があるのですが!」

「帰路をちゃんと辿る能力に問題があるのでダメです」


 機動力に長けた竜族部隊の人達に、周囲の地形がどう変化しているかを調べてもらっている。揺れが続いている上にモンスターも湧いて出ているが、まぁ大丈夫だろう。そもそも、単騎で動いてなんとかなる人選をしているし。

 なので、君は待機だぞルイル。本人は自分の能力を分かっていて、斥候に適性があるのを知っていて、やる気になっているんだが、ダメだからな。

 ルール(分体)が今はニーアさんに貸し出されてるんだから。オートマップ能力代わりに。変化し続ける状態だとはいえ、1つは基準となるデータがあった方が、他の人の情報も確認しやすい。


「ルイル」

「げっルシル先輩」

「腕輪。頑張れ」

「これ魔力がものすごく持っていかれるんですがっ!?」

「ルチルは耐えた」

「うぐぅそれを言われると、あれっ更に消費量が上がってる気がしますよ!?」


 なお魔力の消費が上がってるのは本当。壁から鉱石が生えてくるペースが上がってるからな。たぶんお菓子を食べる手は止めていない分霊が、首飾りの調子が良いのを見て汚れの吸収ペースを上げたんだろう。

 ちなみにルチルは魔力の回復力を鍛える方向に鍛えてきたようだが、ルイルは魔力の最大値を上げる方向に鍛えてきたらしい。こんなところにも個性の差が出た感じか。まぁ元々、小魔法を連打するルチルと、魔法火力を追求したルイルって感じにしたのは私だけど。

 さてそろそろ一旦ニーアさん達が戻って来て、周辺地図が仮に出来上がるかな。どんなふうに変化した事やら。

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