第2151話 68枚目:居場所
穴の中の水面(?)が着々と下がっていくのを眺めながら、それでも未だに復活レイドボス「膿み殖える模造の禍命」の体力バーが確認できたという情報が回ってこない事に対して思考を巡らせつつ、1時間ぐらいが経っただろうか。
「ちぃ姫さん! 領域スキルの展開範囲はそのままでしょうか!?」
「そのままですが……どうしました? スピンさん」
「いえ! そのままであれば問題ありません!」
ててーっ、とスピンさんがやってきて、分かり切った事を確認してきた。特に何も指示が無かったし、何より周辺の状況にも変化が無かった。だから領域スキルの展開範囲もそのままだ。もちろん、少しずつその出力は上げているが。レベル上げの為に。
なのだが、聞き返しても答えずにスピンさんは再びどこかへ走り去っていった。流石にニーアさんほど速くはないが、人間種族の中だとだいぶ素早いんだよな。小人族って元々素早さと器用さに優れた種族らしいし。
しかし何だったんだ、と思いながらざっと掲示板を確認するが、それらしい情報は見つからない。……という事は。
「全体連絡する必要がある程度には重要な情報の、検証中……?」
検証が終われば全体に知らされる。それが分かっているなら、今知らせる必要は無い。途中で説明している時間で検証を進めて、情報を確定にした方が早いからだ。全体連絡なら、少なくとも私なら聞き逃さないし。
しかし領域スキルの展開範囲を確認していく、ってどういう事だ。領域スキルの効果範囲の中と、それ以外の場所で何か違いがあったって事か? もしくは、その境界線で何か発見された?
とすると、目に見えない何か、それこぞ前回の胞子みたいなものを相手にしてる感じなのかも知れないが、見回す限りはそれっぽいものは見えないし……いや、見えないから調べてるのかもしれないが。
「前回の胞子は、分かりやすい色がついてましたからね……」
今回はそうじゃないのかもしれない。……だとしても、本体は少なくともスライムの筈なんだよな。そして今回も「実体化した負の感情」がある以上、それを取り込んでない訳が無いから、黒い筈だし。
黒いなら、少なくともレモンイエローよりは見えやすいよなぁ……? なんて思いながら司令部が更新する全体連絡スレッドを開き、自動更新されるその内容を見返したりしていたのだが。
「!」
割とすぐに、新しい書き込みがあった。それも、赤い文字で「!重要!」と頭に書かれている。
すぐにざっと目を通し、そこでようやくいろいろな疑問が解けた。なるほど、例によってちゃんと「理が通る」訳だ。……対策がちゃんとしすぎて、フラグを踏むと同時にへし折ってしまってもいたようだけど。
「だとしても、流石に寄生能力を得た上に霧化するとは思って無いんですよねぇ……」
司令部によれば、復活レイドボス「膿み殖える模造の禍命」はやはりスライム型。ただし寄生能力を獲得していて、ここまで散々蹴散らしてきた植物(型モンスター)の中に紛れ込んでいたらしい。もちろんその欠片が、だが。
なおかつ植物(型モンスター)が消えると、寄生していた欠片は霧状になってその辺りに滞留。目に見えないほど薄く細かくなったその欠片に触れれば、
もちろん先ほどまで盛大に「実体化した負の感情」が噴き出していた時にも、その勢いに紛れて周辺にばら撒かれている。だからその内、ある程度一斉に寄生深度が上がって、大惨事になっていただろう、との事。
ただし……まぁ、その、だな。
いくらレイドボスの欠片と言っても、目に見えない程の密度、薄く細かくなった霧状の、それこそ液体にすれば1滴にもならないような大きさでは、その体力も相応に低い訳で……。
そして当然ながら、欠片であってもレイドボスはレイドボスだ。今回私は領域スキルを透過状態にして発動しているが、出力は自然回復力関係のスキルを鍛える為もあって、むしろ時間経過とともに上がっていくぐらいだった。そしてそれは、他の領域スキル保持者も同じだろう。
うん。そうなんだ。寄生状態になっていても、どこかの領域スキルに入れば、その寄生状態が解除されてたみたいなんだよな。主に、寄生していた欠片の体力が尽きて消滅する、って形で。
同じく、周辺に滞留していた欠片がスキルに引っかかった事でレイドボスの名前が分かった。だが体力バーは恐らく、ある程度以上の塊を見つけないとダメなんだろう。
そして本体は、恐らくこの「実体化した負の感情」に紛れて存在している。だから体力バーは確認できず、どこにいるんだ? となっていたらしい。
「……見えないのにダメージを受けるという恐怖。を、演出したかったんでしょうが……」
欠片を細かくしたせいで、そこにいる事に気付かれすらしないとか、それは流石にレイドボスとしてどうなの。
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