第2096話 67枚目:反撃と妨害

 どうやらあの、刺脚(投擲形態)を飛ばしてくる兵器に改造された珊瑚みたいなやつは、地上から見えているのと横穴から相手しているのが同一個体だと確定したらしい。

 ただこの兵器珊瑚っぽいの、だいぶ大きいらしく、私達がいる横穴よりさらに下まで続いているようだ。なので司令部は、これを撃破する為には本体の体力が、下段の半分になるところまで削らないといけないんじゃないか、と推測しているとの事。

 まぁ大事なのは、これが横穴と上の両方から削れるって事だ。もっと言えば、削った分はちゃんと削れていて無駄にならないって事だ。


「まぁ削れているんならこっちのものです。それに、こいつに撃たせれば撃たせるほど胞子も減っていきますし、このまま地上の本隊と合流する方向で行きましょうか」


 合流する、と言いながらここを動くつもりは無いんだよなぁ……。みたいな視線をエルルから貰ったが、私が下がって合流するっていうのは無いぞ。土地のより深い場所での力場的除染は外せないからな。流石にこの大穴が再び利用されるっていうのは考えなくていいだろうけど。

 ……という方針で頑張っていたんだが。


「地上の大穴が、崩落によってさらに大きくなったのはまぁいいとして……その崩れた地面を穴に押し込んで塞ぐ事で、横穴からのちょっかいを防ぎますか」

「ねぇ姫さん。召喚者がその土砂の撤去をしてるんだけど」

「ここからちょっかいをかけない、という選択肢はありませんからね。穴を塞ぐための資材を提供してくれて助かりました」

「この穴を塞ぐつもりではあるんだね……」


 もちろんその元崩れた地面は海側へと運ばれ、絶賛埋め立てるのに使われている。壁を作っているとはいえ、ちゃんと塞げるならその方がいいからな。

 という訳で、横穴からの攻略は一旦休みだ。もちろん今も地上では激しい戦闘が続いている。ま、いくら大きい穴とはいっても地上に開いている穴ほどの大きさは無いし、土砂の撤去もそこまで時間がかかる訳ではない。致命的な遅れにはならないだろう。

 そもそも、私は領域スキルを展開したままだし、場所こそ少し下がったが、「異界の不思議な旗」は引き続き設置したままだ。そのバフが乗った状態での撤去作業だしな。


「というか、横穴からの手出しより、ここで「異界の不思議な旗」を設置してから領域スキルを展開する事による、土地の力場的除染が主目的ですからね。今も絶賛仕事中ですよ」

「…………そっかー!」


 あ、これ聞いてなかったか忘れてたな。だから素直にエルルは作業を手伝ってるんじゃないか。建築作業は竜族的に細かい仕事に入らないから。

 さて絶賛戦闘継続中の地上だが、観測班によるライブ動画を見る限りだが、刺脚(投擲形態)を迎撃或いは回避するのはだいぶ慣れてきたらしい。だがそうやって飛び道具に気を取られていると、足元にダンゴムシ(仮)が突っ込んで来たり、怪獣サイズのアシダカ系に踏まれたりするようだ。

 それぞれの対処法と攻略法はとっくに確定しているし周知されているのだが、飛び道具を含めての組み合わせだと、時々「分かっていても避けられない」状態になるらしい。それでちょっと苦戦してるみたいだな。


「……胞子が減るのは良いんですが、もちろんあまり放っておくと再生するみたいですしね。削る速度が落ちれば、当然のように穴の中に積もっている胞子の量も増えるようですし」

「え。まだ増えてるの?」

「たぶんあれの下に、胞子を大量に生産する大元がありますからね。本体がその能力を持っている可能性も高いですし、そうであれば倒すまで止まりませんよ」

「うわぁ」


 まぁ気持ちは分からなくもないが、サーニャは素直だな。そして何度か説明されてる事だし、今までのパターンで考えれば分かる事だ。

 どうした? 普段ならともかく、戦闘なのに頭の回転が鈍いな?


「……だってこれ、戦闘って言うより何かの解体作業じゃないか」

「まぁ否定はしませんが」


 なるほど。サーニャ的にこの大きな横穴でのあれこれは戦闘ではなく作業だったらしい。確かに生き物っぽい気配は無い相手だけども。

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