第1985話 66枚目:攻略推測

 その後朝一番のログインで掲示板を見てみたが、割と阿鼻叫喚になっていた。特に真面目な方に属してランク入りした神への信仰値がある召喚者プレイヤーが大変そうだったな。プレッシャーの重さで。胃が痛そうだった。

 せめてどこかにボックス様が入ってれば! っていう叫びもたくさんあったし、司令部の計画通りなら概念系の神々ばっかりだった筈なのに! っていう叫びも上がってた。そうだね。正直同意しかない。

 ちなみにカバーさん曰く、カトリナちゃんまで話が届いて、それを聞いた瞬間卒倒しかけたらしい。すっかり立派な「聖女」になったから、事の重大さを正確に理解しちゃったんだな。


「まぁ卒倒しかけたであって、ギリギリ踏み止まったのも流石なんですけど」

「しかしなんでそんなところまで話がいったんすかね?」

『当然でしてよ。わたくし達だけでは旗の保持と防衛に限界というものがありますわ。その穴を今まではテイムした仲間に補っていて貰ったところ、今回は人間種族の神が相手ですもの』

「……。あー、あーあーあー、なるほど、手が足りねぇっすね。しかも仲間の種族によっては弾かれるどころか調子が悪くなって旗の耐久度も減る上に、こういう時にめっちゃ頼りになった竜族の人達が軒並みアウトって事っすから、あー」


 そういう事なんだよなぁ。もちろん神話単位だから、その辺比較的おおらかな神の方が多い。多いんだが……やっぱり、蛇とか竜とかは、敵扱いされることが多いから……。


「というか、私なんか最悪、突入自体が不可能になりかねませんからね……。私がダメだと、エルルとサーニャも自動的にアウトって事になりますし」

「そう言えば先輩の種族特性って周囲へのバフ……。……今回真面目にダメな気がするっすね? 勝ちの目が見えねぇっすよ?」

『それでも何とかするしかないのが問題ですわね』

「先輩達抜きでどうやって勝つんすかマジで」

「まぁ、最悪であって、突入できないと決まった訳ではありませんし……」


 それに判定的にはアウトでも、エルルは全部すり抜けて最前線まで行けるだろう。同じく信仰値が全部平均に「無い」という意味で「第二候補」もまずセーフだ。範囲バフというか相手の力場からの防御は、私が無理なら「第一候補」に行ってもらうしかないけど。

 流石にここまである意味メタられるのは初めてだが、特に今回の2択はその片方を私抜きで攻略してるからな。もちろん私自身は参戦しなくても、エルルとサーニャを含むうちの子は参戦してたから、完全にとは言えないかも知れないが。

 それに必ずあの地図の範囲を、もっと言えば壁のように細長いエリアの内部を、全て番号が書かれた旗による力場で覆う必要はないだろうしな。隙間を作ってそこを移動できるようにして、種族特性はともかく領域スキルの展開範囲を絞れば行き来ぐらいは出来る筈だ。……たぶん。


「再現レイドボスでは私抜きの攻略なんていくらでも例があるでしょうし、ダメならダメで何か策を考えてくれるでしょう。司令部が」

「人任せになるっすけど、それしかないっすねー」

『その場合はいい機会ですし、たっぷり消耗品を補充できそうですわね』


 そうだな。直接の参戦が無理でも、ポーションやお札を作る事で間接的に参加は出来るから。むしろ連戦が続いてきて、これからも連戦が続くのが見えている現在、ここで生産に打ち込めるのはある意味ラッキーかも知れない。

 まぁ何はともあれ、陽炎のようなものを調べて引き剥がして、その向こうに突入してからの話だ。正しくはどんなギミックが待っているかを確認してからだな。本当に突入できなくなるのかどうかも推測でしかないし。

 ちなみにこうやって話しながら何をやっているかというと、生産活動である。私とフライリーさんが消耗品とお菓子を作る横で、マリーは【人化】を解いた状態でまったり日向ぼっこだ。優雅だな。大体いつもの事だけど。

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