第1956話 65枚目:難易度上昇

 見えない天井が砕ける音こそうるさいが、割と順調に進んでいた攻略。いくら高さ制限があっても、外から壊せるなら問題は無いからな。

 その本体と思われるガラスの塊のようなものに触れば状態異常とダメージが積み込まれるが、最初に場所を確定する時以外に触れる必要が無い以上は大した問題にはならない。

 なので見えない天井とその核を、エリアの大半を占める大きさの謎構造物もしくは力場を、割と物理で砕いて砕いて今月2回目の水曜日の夜。


「あー……欠片が落ちる上に見えないまま、モンスターの出現スポット化するようになりましたか」


 どうやら何かのラインを越えたらしく、一定以上進んだ先では、見えない天井に攻撃して落としてもその欠片が消えなくなったらしい。本体への攻撃は普通に通るし、本体に攻撃した分は欠片も残さず消えるようだが。

 高さ制限もじわじわ低くなっているようだが、高さ制限の条件はまだ変わっていないらしい。つまり、【人化】を解除した時のサイズだ。なので、ここまでに増してうちのメイン盾ことルドルが大人気なようだ。

 解せぬ。って顔でサーニャがルドルの事を見てたけど、文句ならレイドボスに言うべきだ。そもそも【人化】を解除した時のサイズで高さ制限をかける、って条件自体が、エルルとサーニャを狙ったものな可能性があるんだし。


「まぁ攻撃を反射してくる様子はないみたいですし、とりあえずまだしばらくは大丈夫そうでしょうか」


 というか、流石に私もそろそろ厳しい気がするんだよな。旗槍がつっかえるのは当然として、ニーアさんよりは大きくなってる筈だし。たぶんルイシャンといい勝負なんじゃないだろうか。

 人間種族でも奥まで突入できる人が随分限られてきているみたいだし、かなり厳しい状態だ。主に人数的な意味で。モンスターは相変わらずの出現数らしいし。

 手が足りないから進むのが遅くなって、進むのが遅くなる分だけモンスターが出現し、更に手が足りなくなって、という悪循環に入っている。もちろん起点が地面になる魔法や、壁系魔法は活用した上でこれなのだ。


「そもそも元が小さい種族は、大柄な種族に比べてステータスが高い傾向にある代わり、各リソースの上限が低いと聞いていますし」


 つまりどういうことかって言うと、耐久戦に向いてないんだ。速攻型だな。それが、耐久戦を余儀なくされている、っていうのがたぶん現状で一番ダメな部分だろう。

 もちろん召喚者プレイヤー側も、速攻した方が良い状況で、速攻するのに向いた種族しか入れないんだから、速攻するんだろう、と思って挑戦はしてみたらしいんだが。


「速攻するには距離がある上に敵の壁が分厚くて、突破できなかったようですから……やはり調整ミスでは」


 という事で、可能な限りの大集団になって、モンスターの群れを捌きながらじわじわ中心のガラスの塊のようなものに向かう、という形で安定している訳だ。

 私がいる時はもしかしたら【旗印】が悪さをしているのでは、と思わなくもなかったが、私がいなくてもこの状況ならたぶん誤差なんだろう。そもそもあれは「旗として使っている間」だけ発動するスキルだし。流石に移動中は旗部分を巻き付けて、魔法補正が入る槍として使ってたから。


「外からの攻撃にも何か工夫をする必要がある、とかでしょうか。……見えない天井の欠片からモンスターが出現している分、天井の下のモンスター出現数が減る、とかだったらいいんですけど」


 とりあえず今の所そういう感じは無さそうなんだよな。相手の絶対値が多すぎて気付いてないだけかもしれないけど。

 ……流石に、土地の取り合いに注意と労力を割き過ぎて、肝心の場所に神の力を届かせるのが疎かになっているから苦戦している、とかではないと思いたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る