第1616話 54枚目:応援到着

 やはり壁をぶち抜いて直線の通路を作るのは効果が高かったらしく、一応まだログイン時間に余裕がある状態で、しっかり「神々の塗料」を持ち込んだ応援がやってきた。その集団に、残りのうちの子が全員揃っていたのは良い誤算だ。

 案の定魔法陣を描き始めるとモンスターによる攻勢は激しくなったが、それも込みで召喚者プレイヤーと仲間が来てくれているので問題は無い。やはり思った通り、司令部はこの壊せない壁を囲む形で魔法陣を設置するようだ。

 こうなると私は壁を壊すよりも領域スキルと灯りの奇跡を維持する方が貢献できるので、素直に召喚者プレイヤーによる防衛ラインの奥に引っ込んだ。


「いやしかし、よく燃えますね」

「時々召喚者に燃え移ってる気がするんだが……」

「気のせいでしょう」


 何故なら、私が灯りの奇跡を維持していると、その灯りの炎を他の人に分ける事が出来るようになるからな。そして松明とかに移してからモンスターの群れに放り込むと、少なくともその群れは綺麗さっぱり燃え尽きる。

 燃え尽きるまでの間は延焼しないようにモンスターも近寄らないので、襲ってくる方向をある程度減らして限定する事が出来るんだよな。もちろん壁系魔法も設置してはいるんだけど、威力と効果範囲が違う。

 というかこれ、普段と比べても威力が上がってないか? 確かに敵を焼き尽くすのがティフォン様の権能だし、その権能は敵地でこそ輝くっていうのも間違いではないんだけど。何か補正とか入ってるのか?


「そしてしっかり魔法陣が設置されれば、モンスターが弱体化しますからね。しっかり塗料を使って正確に魔法陣を描けば、神の力も届きますから、壁も復活しませんし」


 空間を切り取って回収すると、当然ながらそこに描かれていた魔法陣の効果も無くなる。そこで使われていた塗料は、今回はそのまま神への捧げものにカウントされるらしく、返ってこないようだ。

 だがここはほぼ間違いなく中核付近であり、ここが回収されるという事は事態の解決とイコールとなる。だから塗料を遠慮なく使えるって訳だな。

 そもそも魔法陣はその空間全体に効果があるもので、設置すればするだけ有利になる仕様だ。ここまでは空間の切り取りと回収が主目的だったから中々設置出来なかったようだが、絶対に回収が最後になる空間があるなら、まぁ設置するだろう。


「魔法陣が設置される事でモンスターが弱体化すれば、その分だけ空間の切り取りと回収も捗るでしょう。北側も壁を破壊して順調に進んでいるようですし、ここで決戦準備を完了したいところです」


 次の土日が1月最後の土日だからな。1月自体はまだ何日か残っているが、レイドボスが2体同時なんだから、そこで倒し切るつもりで無いと厳しいだろう。片方ずつじゃなくて同時撃破を狙うんならなおさら、召喚者プレイヤーの稼働率が高いタイミングに決戦を持ってこないと無理がある。

 それは司令部もベテラン召喚者プレイヤーも分かっている筈なので、それでここまでスムーズに応援が来たし、魔法陣を描く為に塗料を放出する事が決まった側面もあると思う。まぁここが最前線で、一番激しい戦闘が起こってる場所だ、っていうのも無くはないだろうけど。


「ちぃ姫さん、灯りの奇跡をこちらにお願いしてもいいでしょうか?」

「おやこれは。分かりました」


 とか思っていると、司令部の人が何か大きなものを持ってきた。……これ、「縛り連ねる外法の綱核」の時に使ったでっかい篝火台じゃないか。宿すのが奇跡による灯りなんだから、小さい聖火台の方が正しいのかもしれないけど。

 やっぱり専用の道具だからか、これで維持してる方が魔力を始めとした維持コストが少なくて済むんだよな。領域スキルのコストもだんだん減って来て楽にはなっているけど、負担が減ったらその分だけ他の人の回復にも回せるし。

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