第1334話 42枚目:突入準備
という訳で、金曜日の帰宅から夜のログインだ。
「……本当にそれを持って行くんだな」
「ボクらはここ何日かでなんとか慣れたけど、他の召喚者は加減できる?」
「もちろん持って行きますしずっと持ってますよ。流石に領域スキルは戦闘時まで展開しませんし。今回の場合、味方の強化と言うより敵の弱体化の方が重要です」
「響鳴する皇竜の旗槍」を両手で持って移動の準備をしていると、エルルとサーニャにそんな事を言われたが、根拠を示すと納得してくれた。
そう。私の種族特性は、善と中立に属する相手には主に回復力と耐性を上昇させる。逆に、悪に属する相手にはそれを下げる効果がある。そして回復力がマイナスまで行くと、スリップダメージが入るんだよな。
検証してもらったところ、回復力と耐性がごっそり下がると、息苦しい、に近い感覚を覚えるようだ。後は地味にアビリティのクールタイムが縮まるので、見分けが簡単につくようになる。
「領域スキルを重ねて展開すれば、それだけで一定範囲から敵対勢力を一掃できるのは大きいでしょう。特に今回のように、本気も本気で仕掛けてくる可能性が濃厚なのであれば」
「……。姫さん。ちょっと不敬かもしれないんだけどさ。あの御使族の召喚者はそういう事出来なかったの?」
「出来ると思いますし、やっていたと思いますよ。でなければ恐らく、痛み分けにも持ち込めていませんし」
「そもそも異世界からの侵略者がしっかり影響してる中で、更にそれと手を組んだ邪神の信徒相手だったからな」
「なるほど、それもそうだね」
後は、あれで「第一候補」はまだ【成体】(か、それ相当の体スキル)になってないからな。何せ進化に必要な条件が、たぶん御使族の街にあるから。なんかあと一歩だと言ってた気がするけど、私が竜皇様に認知してもらう(意訳)だった事を考えると、種族の街に行くのはたぶん必要なんだよな。
どうやらグラスファイバー、結晶糸を使った装備を持っているとバフを受けられるという感じに話が広まっているらしく、普通に結晶糸というカテゴリに属する素材が優秀なのもあって、トップ
……バフを受けられるんじゃなくて、バフが伝播するが正解なんだが、まぁ間違ってはいない。
「効果は減っていきますが、装備を付けた人が集まって伝播し合えばある程度は重なっていきますからね。バフが受けられるでも間違ってはいません」
「お嬢。ちょっと思ったんだが、もしかしてお嬢から伝播した効果を更に伝播する奴が近くに居たら、お嬢自身にも効果があるんじゃないか?」
……。
…………なるほど?
「種族特性自体は純粋な底上げですから、大きな問題にはならないでしょう。……更に【調律領域】の効果が跳ね上がりますけど」
「本当に展開タイミングは気を付けろよ?」
「気を付けます」
そうか、とうとう領域スキルの効果を自分で受けられるようになる訳か。まぁ【調律領域】の方は私のステータスが基準になっているから、特に変化は無いだろうけど。
…………本当に気を付けるべきは【王権領域】を重ねて展開した時だな。どっかで止まるとは思うけど、ステータス上昇効果があるから。
「カバーさんには相談していますし、流石に装備が増えた程度で無限にステータスが上がり続ける、という事は無い筈ですから、たぶん大丈夫な筈です」
「……ほんっとうに、気を付けろよ?」
「はい。気を付けます」
……一応自分で建てた神殿に行って、ナヴィティリアさんに確認しておくか。流石に無限にステータスが上がり続けるって事はないにしろ、ちょっと噛み合い過ぎて恐ろしい事になりそうだ。
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