第1317話 42枚目:総攻撃中

 攻撃のメインを推定レイドボスの本体に変えてから、時々ギミックをまとめて処理したりする事、たぶん1時間ぐらいだろうか。

 私はその時亜空間の端から振り下ろす系の魔法を叩き込む事で攻撃に参加していたのだが、ギィ――、と妙に長い軋みの音が響いた、と思ったら。


――――バギィンッッ!!


 と、特大の「砕ける音」が響いてきた。素早く司令部の更新する掲示板をチェックする。


「観客席に落ちてきた特大の檻、やっぱりあれが柱だったみたいですね。あそこに繋がっている特に太い鎖が1本、切れたようです」

「思ったよりも時間がかかったね。途中で中を掃除してたのもあるだろうけど」

「まぁあの大きさだからな。柱って言うなら守られてただろうし、既にある程度大きくなってたんなら時間もかかるだろ」


 てーい、と魔法を叩き込みながら掲示板を開いて読み上げると、サーニャとエルルの反応はそんな感じだった。まぁそうなんだけど。

 どうやらそこから、入り口の数に応じた角度分だけあの立体構造の鎖による天井あるいは蓋が崩れ落ちたらしい。ただ断面はその端から下がった鎖で見えず、その下がった鎖の先には全て檻が下がっていたらしい。

 そしてその檻の全てにモンスター召喚の魔法陣が展開された、とほぼリアルタイムで情報が更新されたところで、カバーさんからウィスパーが届く。


「はい。お仕事です。大量のモンスター召喚用魔法陣が出現したらしく、闘技場入り口に展開している召喚者プレイヤーだけでは捌ききれないので応援に来て欲しい、との事です」

「どうなるかと思ったが、痛打が入ったにしては順当か?」

「何がどう順当なんだいエルルリージェ」


 エルルはだいぶ召喚者プレイヤーの感覚に慣れてきたみたいだな。サーニャはもう一息だ。頑張って慣れてほしい。




 大量に追加された檻については、モンスター召喚の魔法陣を解除した上で相応の攻撃を叩き込むと、檻の部分だけが壊れる、という事が分かった。垂れ下がっている鎖にも攻撃は当たったのだが、そちらはどうもダメージが通っていないようだ。

 まぁでも所詮はモンスターの群れだし、解析済みの魔法陣だ。攻撃を叩き込み続ければ明確に削れるというのが分かった以上、少なくとも新しい動きがみられるまでは袋叩きタイムである。

 もちろんモンスターを倒すと相変わらずコインが手に入るし、大量に追加される檻の中にはしれっと召喚者プレイヤーや住民の仲間を吸い込んで捕まえようとするものが混ざっていたので、油断は禁物なのだが。


「あれは完全に初見殺しでしたね。そしてまた値段が完全にぼったくりという」

「返す気が無いんだから妥当だろうな」

「むしろよく支払えたね?」


 取り返す為のコインはちゃんと帳簿をつけていたのが幸いして、その捕まった召喚者プレイヤーが稼いだ分から支払われることになった。初見殺しだったので誰かが犠牲になるのは避けられなかっただろうから、仕方ないな。

 そういう事なので、今も防壁の内部に蓄積されるコインの枚数は増えている。初見殺しの捕獲罠の存在が発覚した事で、いざという時に自分を買い戻す分だけのコインは稼いでおかなければ、と、召喚者プレイヤー達に危機感という名のやる気スイッチが入ったのもあるだろう。

 ちなみに吸い込む檻は、最初からモンスター召喚の魔法陣が無いやつの他に、魔法陣を解除すると吸い込みが発生するものがあるらしい。そっちが初見殺しだったのだが、どうやって避ければいいんだろうな?


「このまま柱を全部落としきってしまえればいいんですが、そういう訳にもいかないでしょうし」

「流石に何か反撃はしてくるんじゃないか?」

「まぁモンスター召喚だけって事はないよね。近くに居たら強制的に捕まる、ぐらいはありそう」


 とりあえず今司令部は推定レイドボスの本体に対するダメージコントロールを行い、残り6割ぐらいのところで一気に削り切る算段を立てているようだ。どういう方法でか、柱となる鎖の耐久度を確認しているらしい。

 今までのパターン的に、半分を切ったら何か起こるだろうって事で、その手前で調整してるんだな。なお現在残りの面積は8割ぐらいだ。そこまでは端から順番に削って落としていくらしい。

 既にギミックはだいぶお腹いっぱいだから、このまま袋叩きタイムでレイドボスを完封できないかな。残り時間もかなり切羽詰まって来たし。

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