第1315話 42枚目:方針変更
ちょうどコインを預けに行くところだったし、そのまま司令部に相談。緊急調査が行われて、私の違和感が確かだった事……つまり、「推定レイドボスの本体が大きくなっている」事が確定された。
闘技場の内部から見る分には変化が無いという事で、外から見なければ分からなかったやつだな。元々の色が黒っぽい上に密度が高いもんだから、多少増えても斜めから見る分には分かり辛かったのか。防壁からも観察していた筈だから、時間の問題だったかもしれないけど。
さて、ギミックを順当にクリアしている筈なのに、明らかに歓迎できない変化が起こっている事が判明した訳だ。ではどうするか、という事なのだが。
「最悪、闘技場が丸ごと敵になる可能性もあり、と。……まぁ確かにこのサイズですからね。レイドボスとして不足はありませんが」
「むしろデカすぎんだろ……」
「というかこれ、一応は神の力の塊じゃなかったっけ? それがモンスターになるの?」
「その神が現在全力を尽くしているのは、元凶を「この亜空間に閉じ込める」事ですからね」
「……そうか。これ自体は作ってそのまま手を加えてないのか」
「なるほど、半分放置されてるって事かぁ」
ギミックに付き合うのを止めて、外から直接攻撃で削っていく方向に方針転換した。判断が早いんだよな。頼もしい。
内部の防衛拠点を放棄して、外側にぐるっと囲む形の防壁を更に強化・増築する形で備えを進め、飛行部隊が上空から推定レイドボスの本体に攻撃。当然のように溢れ出してくる通常モンスターは、入り口前で待ち構える
そういう事になったので、魔法の射程が長い私は亜空間の端まで下がり、長い射程で主に振り下ろす形の魔法を推定レイドボスの本体に叩き込んでいた。ルチルはフライリーさんと一緒に飛行部隊として活動している。
「ところで、直接叩いて実際効果は出てるの?」
「闘技場内部に鎖の欠片が落ちてきているらしいですよ」
「攻撃自体は通ってるのか」
攻撃自体は通ってるんだよな。ちなみに真上を通ったら鎖が伸びてきて捕まえられる、というのは分かっていたが、空中から攻撃しても鎖が伸びてくるらしい。割と素早いから、回避が結構大変なようだ。
まぁ鎖に捕まってしまっても、巻き戻る前にその鎖を切ってしまえば助かるみたいだけど。だから、伸びた鎖を迎撃する班が編成されていた。伸びてきたのを切れば、普通に攻撃を叩き込むより効率はいいからね。
私の方には来ないから、流石に伸びる長さにも限度があるって事だろうか。それとも地上からの攻撃には反応しないのか。どっちなんだろうな?
「安全圏から殴り放題なんですから、もちろんこのままボコボコにしますけど」
「言い方もうちょっと無かった姫さん?」
「戦闘という分野における、射程というものの重要性を叩き込んであげます。物理的に」
「それはそうだがそうじゃないだろ……」
なるほど確かに、物理じゃなくて魔法だ。ダメージでと言うべきだったか。
推定レイドボスの本体にダメージが入るにつれて、闘技場内部ではギミックの続きが展開されているようだが、現在はほぼ無視されている。だってさっきまではクリアするまで次が出てこなかったのに、今はダメージに応じて次々にギミックが出てきてるそうだからな。
おかげで闘技場内部は大変な事になっているようだが、今となってはそれらのギミックが
「むしろ闘技場を乗っ取られる前に何とかできれば、まだマシな状態で戦えるって可能性までありますからね。主に大きさ的な意味で」
「まぁ、半分にでもなれば相当やりやすくなるのは確かだな」
「一応神の力で作られたものなんだし、神様への影響を心配するところじゃないかなぁ」
影響の心配なぁ……。これがボックス様とは言わないが、せめて“理知にして探求”の神ぐらいの良識を持っていてくれればもうちょっと心配したんだけど。
今のところ、守銭奴なとこしか見てないから……。
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