第1298話 42枚目:建築と変化

 相変わらず超特急で建築された防壁は、その時点であったコインの山を覆いきった時点で闘技場外周の1割ぐらいの長さになったようだ。本当に山だったな。この闘技場滅茶苦茶大きい筈だぞ?

 その大きさに応じて入り口も複数ある訳だが、特に大きいのは8個となる。そのうちの1つに近い場所から建築していったから、次の入り口が見えてきた辺りで止まった事になる。

 まぁでもそれならそれで、キリよく次の入り口まで建設を続けてしまおう、と作業は続いていた訳だが。


「何もないとは思っていませんでしたが、こう来ます?」

「姫さん、何あれ」

「おそらく見ての通りでしょう」

「えぇー……」


 内部で何か更なる変化があったのか、それとも予定通りなのか。空間を閉じているのに合わせて入り口の扉は閉まっていたのだが、そこに、こう、張り紙みたいなものが出現したんだ。

 闘技場に張り出されるのだから賭け金の倍率や選手紹介かと思ったが、そもそも今内部では大規模戦闘をやっていて、賭け事は出来る状態ではない。じゃあ何だとよく見てみたら……どっちかっていうと、手配書みたいなものだったんだよな。

 耳を澄ませた限りこの防壁の最初に当たる扉の方でも似たようなざわめきが起こっているようなので、たぶん全ての扉で同じように出てきているんだろう。


「だってこれ、賞金首とかの張り紙じゃない? モンスターも召喚者もごちゃまぜだけど」

「そして紙に見えますが、紙ではないんでしょうね。なんかゲージが出現して溜まっていってますし」

「あ、ほんとだ。あれ? でも動いてるのはモンスターの方だけだよ?」


 ここで司令部に確認。手配書? に載っている召喚者プレイヤーは、闘技場の中にいる(筈の)召喚者プレイヤーで間違いないらしい。ついでに手配書(仮)の内容は、少なくとも今確認できた限りは全ての入り口で共通だったそうだ。

 司令部は全ての入り口を確認するまで静観のようだが、その前にモンスターの手配書(仮)に表示されているゲージが溜まり切ってしまいそうだ。情報の更新が止まっているって事は【鑑定】系スキルが通らないって事だろうし、それは放っておくとまずい気がする。

 で、今ここから出来る、“偶然にして運命”の神に関係してそうな動きと言えば……。


「モンスターがコインを狙ってきていましたから、恐らく大量のコインが闘技場の外にプールされている現状は順当な筈です」

「まぁ確かに、他にどうにか出来そうな手段は無かったよね」

「であれば、それこそ神が完全に押し負けて何もかも「モンスターの『王』」の好きにさせられている、とかでないのなら、そこから少なくともしばらくは動ける状態になっている筈ですので……」


 ここでインベントリから取り出すのは、解決してから神様用の神器を取り戻す為、賭けをする元の資金として手元に残しておいたコインだ。


「コインがたくさんある状態で何とかできる、という前提である可能性が高い訳ですね。とりあえずサーニャ」

「なんだい姫さん」

「このコインを召喚者プレイヤーの描かれた紙に触れさせてみてください」

「……確かにこれは神の力の欠片だけど、あれは紙だよ?」

「ゲージが出て動いている時点で、絶対にただの紙ではありません」

「いや、それはそうなんだけどさぁ……?」


 疑問符をいっぱい浮かべながらでも動いてくれるんだから、サーニャもだいぶ召喚者プレイヤーに慣れてきたよね。それこそ出会った頃なら、そんな推測ある訳ないって笑い飛ばされててもおかしくなかっただろうし。

 もちろんカバーさんを通して司令部には声をかけている。干渉する手配書(?)は召喚者プレイヤーの方で、何もしないと変化が無いから大丈夫だと思うんだけど。


「姫さーん」

「どうしました?」

「紙にコインで触ったら、何か出てきたよー。調べるのが得意な人呼んでもらえる?」

「分かりました」


 何かってなんだろう。投入画面かな?

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