第1297話 42枚目:地味な痛打
案の定難癖をつけてきていたのは徒人族の男性だったが、こういう権威をかさに着て動く奴はそれ以上の権威を前にすると、信じずに反発するかやっちまったと悟るかのどっちかになる事が多い。
今回は比較的マシだったのか後者だったので、再現ドレスを着てサーニャを後ろに控えた私が姿を見せた時点で固まっていた。近づくとその場で膝をついて顔を伏せていたよ。いやぁ、話が早くていいね。
もちろん開放するのは話を聞いてからだ。どうやってここに来たのかとか、余計な入れ知恵をしたのは誰か、とかね。それ以上の接触を断つ意味でも保護対象だし。
「で、片付けば良かったんですが……」
問題は……よりにもよってそのタイミングで、闘技場との出入りが断たれたことだろうか。たぶんなんかステージが進んだんだろう。
何故確定しないかって言うと、闘技場の内部とだけは
いや。まぁ。そりゃね。このタイミングが一番困るんだろうな、って予感はしてた。だからこそ秒で片付ける為に私が出張った訳だが……読まれていたか。
「とはいえ、強行突入する訳にもいきませんからね。少なくとも神の力である事は確定していますから、これ以上綻びを作る訳にはいきませんし」
エルルは中にいるので、過剰火力である事は変わりが無い。司令部だって現地の状態を見て指示を出す人達が残っていた。そもそもレイド戦の最前線を張っている
まぁ私も忙しいんだけどね。分断されたって事は、外側であるこちらにも何か起こるかも知れないし。主にコインを防衛しないといけないから。
「内部と同じく、コインの量に応じたモンスターが出現するとかだと、防衛対象が大きい分だけ難易度が高いですからね」
「だからって山積みの箱を軸に防壁を作るのはどうなんだろ……」
「使わなくても今後の勘違いさんを誤魔化すことが出来ますし、元々特殊な空間に神殿を建てる為の材料です。問題は無いでしょう」
「そういう事じゃないんだよなぁ……!」
そういう事で、現在建築作業真っ最中である。今回は街の外にそこまで大規模な拠点を作らなかったので、持ち込んだ建材が比較的余っていたんだそうだ。まぁこれだけ規模が大きくて施設の揃ってる街だったら、既にある施設を使った方がいいよな。
なんかサーニャが解せぬって顔をしているが、それでも作業はテキパキ進めてるんだからすごいな。やっぱり竜族は得意技能に建築を加えるべきじゃないだろうか。
もちろん、闘技場の入り口を塞がないように建築されている防壁の出番は無い方がいい。むしろ「使わないのに何一生懸命作ってんの?」と笑われる方がマシだ。むかつきはするけど。
「軸が軸だからちゃんと守る必要があるからって、本当に丈夫に作る必要ある?」
「使わなければそれでいいんですよ。むしろ使わない方がいいです」
「じゃあもうちょっとこう……」
「しかし、万が一使う必要が来た時に、その手抜きのせいで突破されたり被害が出たりしたら笑えません。万に一つの備え、無駄になる前提の準備。
「姫さんは本当に真面目だなぁ」
「私が真面目というより、今までの経験ですね。本当に、一体何度「万が一の備え」がドンピシャリで役立ってしまってきたことか」
「……少しも否定できないのが辛い」
ははは。サーニャもだいぶ
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