第1284話 42枚目:変化秒読み

 カバーさんが私が協力している報酬を口実に確認を取ってくれた……報酬が口実だよな? 確認が口実じゃないよな? あれ、ちょっと不安なのは何故だ。ともかく、大規模戦闘についての確認をしてくれたので、“偶然にして運命”の神にも非常事態が起きた時の対処を決める事が出来た。

 もちろんその内容はカバーさんにメールしたので、司令部でも私が参戦可能だという事は把握できている筈だ。となると後は、いつレイドボス、あるいは元凶が出てくるかという問題だ。

 今のところ、街の中に出現した野良ダンジョンの傾向としては、やっぱり裏カジノとの連動が見られるんだそうだ。例えば特定のカジノゲームが出やすい場所の野良ダンジョンを集中して攻略すると、裏カジノに設置されているそのゲームの設置数が減る、とかな。


「司令部の指示じゃなくて、一攫千金を狙ったスロット目当ての召喚者プレイヤーが殺到して分かったっていうのがあれですけど」

「数の暴力っすねぇ」


 なので今は裏カジノにいる召喚者プレイヤーとも連携し、闘技場以外のカジノゲームへ均等にダメージを入れようとしているようだ。何故連携するかっていうと、遊ぶ人が少ないゲームは減らされるのが早いらしい。

 とはいえ、残りの時間加速も内部時間で40時間ぐらい。そろそろ時間が無くなって来たな。裏カジノに強制転移させられ始めてからの通信途絶は割と早く解決した筈だし、順調にいってるとは思うんだけど。


「そういえば、先輩無しで裏カジノとの連絡って取れるようになったんすか?」

「こちらに来ている『巡礼者の集い』の人達がしっかりと力場を作ってくれたようで、それで通じるようになったみたいですよ」

「あ、解決策は出てたんすね。先輩がこっちに来てるんで、どうやって連携とってるんだろって思ったっすけど」

「後は、本来の意味で神の力が戻ってきたっていうのもあるでしょう」

「相手の影響力が削がれたっていうのもありそうっすねー」


 なお私は問題ないが、フライリーさんはそれなりに仮眠を取ったりしている。空間を良い感じにずらすって、どうやってるのか本当に不思議だな。これで最終的な経過時間が一緒とか。

 不思議技術に思いをはせる程度には来客こと報酬協力のお仕事が落ち着いているので、たぶん何か動いてるんだろうなー、と、薄々察してはいたんだ。


「……まぁ、流石に私とエルル特級戦力を隔離する為に誰かがささやいたって事はないでしょうし……」

「流石にそれはあんまりだと思うっすよ先輩……」


 なんていう言葉が出る程度には退屈もとい平和だったから、まぁ、その、油断してたんだろう。


「お嬢!」

「わっ!?」

「んのぁ!?」


 とりあえず見える範囲では順調な進捗しか出てこない掲示板を見ていると、突然エルルに抱え上げられた。何事、と思って咄嗟にフライリーさんを抱えると、さっきまで座っていた椅子がちょっと離れたところに見える。え? 一瞬でここまで移動したの?

 エルルと私では進化しても相当に身長差があるので、腕一本で抱えて運ばれる事は可能だ。にしてもこういう形は珍しいな、と思った目の前で――パシュン、という感じで、椅子が光に包まれて消えた。

 とっさに抱えられたまま足元を見る。と、そこには分かり辛いが、恐らく光で描かれた魔法陣が出現するところだった。えぇー?


「強制転移とか、良い予感がしないんですよね。エルル、避け続けられますか?」

「とりあえず今のところはな。この場所一面、とかになると無理だろうが」

「神様が用意してくれた待機場所でそれってヤベーっすね!?」

「ヤバいというかダメですね。何をうかうか干渉を許してるんでしょうか」


 もちろん、軽くステップを踏むようにしてエルルは避ける。魔法陣は空撃ちになる。だがすぐ足元に出現する。というのをおよそ3秒サイクルで続けつつエルルに確認するが、とりあえずこの大きさのままなら大丈夫そうだ。

 しかしフライリーさんの言う通りなんだよな。いや、これが神の力によるものだったら、それはそれでダメなんだけども。

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