第1275話 42枚目:全体進捗

 エルルとサーニャは戻ってきたが、カバーさんはまだ裏カジノに残っているようだ。他にも何人か召喚者プレイヤーが残っているそうなので、恐らく検証班が何か検証しているんだろう。

 しかし動きがあったという事は、何かは分かったって事の筈だ。もちろんエルル達のように、救助対象を速やかに安全な場所へ移動させる為に引き上げていた人もいるだろうけど。

 そう思いつつお菓子作り作業にフライリーさんを頭に乗せた状態で戻ると、さほどなくイベント用の掲示板が更新されたようだ。


「ん、先輩、イベント情報が来たっすよ。このまま読み上げるっすね」

「ありがとうございます。お願いします」


 周りの人も聞きたいだろうし。と、読み上げてもらったところ、裏カジノはこの街にある他の店舗と同じく、“偶然にして運命”の神の下に付いた店長的な存在が運営している、実質的な一店舗という扱いになるらしかった。

 それにしては規模が大きいし内容もあれだが、それは影響のせいだとして。裏カジノを運営してあの空間を維持する為の、支配人というか店長というか、個人的感想で言えば親玉がいる事が確認されたそうだ。

 恐らく“偶然にして運命”の神に殊更強く影響が出ているのもそいつのせいだろうし、今までのパターン的にこいつが中ボス、もといレイドボス相当の何かで間違いないだろう、と司令部は予測しているとの事。


「んで、今はそのイレギュラー店長を引きずり出す方法を探してるそうっす。この街のルール的に“偶然にして運命”の神が認めれば、店そのものを賭けて勝負する事も出来るらしいっすよ。それに裏カジノは「何を賭けてもオッケー」っすから、店っつーか空間の支配権を賭けさせる事も不可能じゃないみたいっすね」

「読み上げありがとうございます。……確かに理は通っていますが、それだけの掛け金を用意するのが大変ですね」

「お嬢はダメだからな?」

「まだ何も言ってないじゃないですか。言っておきますけど、エルルもダメですよ」

「いや、何で俺だ」

「竜族の『勇者』という時点で下手すれば私より希少な存在ですからね」

「……」


 忘れてたな。いや、自分のレア度を客観視してなかっただけか。それでなくても闇属性ドラゴンの希少種かつ突然変異だっていうのに。話が伝わってるって事は前にもいたって事だろうから、下手すればただの突然変異よりレア度は上だぞ。

 私も大概レア度の高い進化先を選んでいるが、はっきり言ってエルルも相当だからな。ついでに言えばサーニャもだ。もちろん私や他のうちの子はそんな目で見たことは無いが、使徒生まれだったり異世界生まれだったり限界突破個体だったり、客観視するとうちの子達はもれなく希少種だからな?

 いくら個々の力が強くったって、そういう意味の防御は個人だと限界がある。だからクランハウスの防衛は特に念入りにしてるんじゃないか。純粋にゲテモノピエロ対策っていうのもあるけど。


召喚者プレイヤーに限ってすら私、フライリーさん、マリーと希少種が揃い踏みなんですから、正直誰がいつどこで目を付けられて狙われていてもおかしくないんですからね?」

「いや先輩、流石にそこまでじゃないと思うんすけど……」

「隙が出来た瞬間に誘拐されておいてそれは通りませんよ、フライリーさん」

「……そういえばそうでした。やな実績解放しちゃったっすねー」


 なお、この会話に周りの人も頷いてくれているので、私の客観視した判断は正しい。それもあっていつもより自己防衛に徹してるんだろ。エルルとサーニャが不覚を取るとしたら、間違いなく私関係だし。


「…………気を付ける」

「そうして下さい。ま、カバーさん達もそれは分かっているでしょうし、竜都と密な連携が必要な現状、それは最終手段です。というかそんな要求をされた時点で、今の司令部なら裏カジノの物理的な破壊に切り替えるでしょうし」

「あー……まぁ、きっちり避難誘導をしてからの若干の被害及び莫大な物損と、竜都っつか竜族からの信頼を比べたら、まー信頼の方を取るっすよねー」


 そういう事だな。なので掛け金として要求されたとしても、恐らく髪を一房とかそんなもんだろう。それでも十分すぎる価値があるだろうし。

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