第1271話 42枚目:不明の理由
窓の外に張り付いている小悪魔は無視する事に……する訳にもいかず。目視かつ指差し確認で透過するように設定を変えて魔法を張り直し、お菓子を更に山盛りにして対応する事にした。
その結果、空が白み始める頃には小悪魔が5人(?)、テーブルに盛られたお菓子を囲んでもぐもぐする図が完成していた。そろそろテーブルに乗り切らないんじゃないだろうか。
「お菓子を出来るだけ詰め込み直してきてよかったですね……」
しかし帰らないなこいつら……。と思いながら、一旦お香の生産道具をしまう。なお、未だにエルルとサーニャは戻ってこない。おかしいな?
流石にここまでくれば「何かあった」のは明らかであり、そうなれば少なくともカバーさんかカバーさんを経由しての司令部あたりから何か連絡がある筈だ。が、それも、掲示板を覗いたところで見当たらない。
一度ログイン状況を確認。うん。ログインはしてるよな、カバーさん。
「……となると、また特定条件下のみでの連絡不可能案件でしょうか」
ならきっかけというか、フラグっぽいのは……と、お菓子をもぐもぐしている小悪魔達に目を向けるが、流石に
途中で一度カバーさんにメールを送ってみているが、返事はない。これが何かしらの異常であるなら、ウィスパーを飛ばしたところで連絡はつかないだろう。ならどうするか。
んー……、としばらく考えた末、自分を中心とした半径1mの範囲に【調律領域】を展開してからウィスパーを飛ばしてみる事にした。もちろん今まで手に入れた「加護の証」がある事を確認した上で、だ。
「【王権領域】まで重ねると、ちょっと刺激が強そうですしね」
という事で展開。……した瞬間にウィスパーの着信音が鳴り響き、小悪魔達の視線が私の方に向いた。おっと、なんだなんだ。
とりあえず小悪魔達の方にはこちらから近づいて、1個ずつ大きな菓子パンを渡すと大人しく食べるのに戻っていったので、これで良し。
念の為「お菓子籠」にインベントリからごそっとお菓子を継ぎ足しておいて作業をしていた場所に戻り、どうやらカバーさんかららしいウィスパーに応答した。
『何があったんですか、カバーさん』
『ちょっと厄介な事になりまして。すみませんがちぃ姫さん、司令部宛てのスレッドへ代理投稿をお願いしてもいいですか?』
『厄介な事にはなってるんですね。分かりました』
まぁ、限定的に
という事で話を聞きながら司令部へ情報提供をするスレッドへ書き込んでいったんだが……うーん。まぁ。うん。納得できるかできないかって言ったら、まぁ、出来るけども。って感じだろうか。
何の事かっていうとだな。今カバーさんと、エルルとサーニャ、そこそこの人数の
……あったんだってさ、裏カジノ。
私が察した通り、案内人は眷属である小悪魔だ。条件はまだちょっと分かっていないようだが、小悪魔が差し出す特殊な金のコインを受け取ると推定地下にある裏カジノへ強制転移させられるらしい。
そしてそこでは「何を賭けてもオッケー」であり、行われるゲームの種類も頭にデスとつくものがそれなりに含まれているようだ。もちろん、負ければ賭けたものが何であっても持って行かれる。
そしで裏カジノから脱出する為には、特殊な金のコインを10枚捧げて脱出の権利を得るしかないらしい。問題はその特殊な金のコインを入手する方法だが。
「……命は移動させられない。よって金のコインで代用すると来ましたか」
つまり、相手に命を賭けさせて、奪う。これが正攻法となるようだ。そういう事なので、脱出する為に必要な特殊な金のコインは11枚以上となる。10枚ジャストだと手持ちが0枚って事で死ぬんだってさ。ふざけんな?
一応裏カジノ内部で貴重品を賭ける事で通常のコインを稼ぎ、そこから景品扱いで交換する事も可能だそうだ。後は命を賭けるにしても、モンスター相手の闘技場で連勝を重ねるという方法もあるらしい。
とりあえず書き込むべき情報はここまで、という事で、一旦掲示板を閉じる。そこから、ゆっくりと息を吐き出した。
「――……ふざけんな」
思ったより低い声が出て、威圧も零れてしまったかもしれない。視界の中に入れていた小悪魔達が、揃って小さく飛び上がってお互いを抱きしめ合い、団子になったから。
カバーさんからの情報には、非公開なものが含まれていた。それが何かって言うとな。裏カジノ限定の景品についてだ。明らかにヤバい裏カジノからエルルとサーニャが戻ってこないって時点で、何となく嫌な予感がしてたんだけどさ。
裏カジノの景品は、生き物ありで。
その中には竜族を含めた希少種族がちらほら混ざってて。
なおかつ。…………フライリーさんが、景品として、捕まってるんだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます