第1261話 42枚目:賭博結果

 という事で、護衛は代理人を兼ねてもオッケーって事で、エルルとサーニャに交代しながらあちこちのゲームをしてもらった結果。


「まぁこんなもんだろ」

「うーん、やっぱりもうちょっと勝負した方が良かったかな」


 エルルは納得しかないけど、サーニャもすさまじく強くてびっくりしたよね。にこにこしながら勝負を眺めてただけでチップであるコインが10倍ぐらいになってるんだけど。案内人さんの顔が引きつってるな。

 いやまぁ、運要素が低いゲームがある方を選んだのは私だよ? 私だが、それでも運の要素が無いって訳じゃない。……にもかかわらず、ほっとんど負けてないんだよな、2人とも。

 途中からゲーム自体じゃなくて、どっちが多く増やせるかの勝負になってたからな……。これもステータスの暴力でいいんだろうか。いや、どっちかというと制御訓練の副産物か?


「これは、お強いですな……」

「当たり前だ。お嬢がいるのに負けを見せる訳がないだろ、どんな条件が追加されるか分からないのに」

「それにねぇ。君達はちゃんとした入手ルートを経ているっていうけど、絶対にそんな訳ない竜族ボクらの子供が「景品」になってたのも一度や二度じゃないだろう? 対策もするさ」


 …………なるほど、そっちか。

 顔が引きつりながらも口を挟んだ案内人さんに、うっすらと威嚇を乗せて答えるエルルとサーニャ。まぁお忍びとはいえ皇女が来てるんだし、いくら健全で公認とはいえ賭け事は賭け事。だからか、割と倫理が無い方の中立・中庸なようだ。

 まぁ今はその上に「モンスターの『王』」の影響を受けているしな。ぶっちゃけ私も、この神殿に入ってから割とちょいちょいヤバそうな視線は感じたりしている。私で分かるんだから、2人も気付いているだろう。


「そういえば、景品はコインと引き換えですよね? どこで交換するんでしょう」

「あぁ、それはこちらです」


 まぁでもこのまま案内人さんを威嚇している訳にもいかないし、かといって更にコインを稼ぐのもな。何故なら元となったコインと違って、賭け事に勝って手に入れたコインはインベントリに入らないんだ。めっちゃ嵩張る。

 なので助け船も兼ねて移動を促すと、案内人さんはすぐに反応してくれた。まぁそうだよね。うっすらとはいえ竜族の、職業軍人の威嚇だ。おかげで周りから人がいなくなっている。

 道中の説明によると、どうやらこのカジノこと“偶然にして運命”の神の神殿は正方形をしていて、それを9つにブロックわけしたような構造になっているらしい。中央の手前がエントランスホール、右列と左列がカジノスペースで、景品交換所は中央の奥にあたるようだ。……って事は、中央の真ん中は“偶然にして運命”の神がいるって事か。


「我らが神は駆け引きにかけられる熱量と技量を評価し、そこで勝ち取った勝利に祝福を下さいます。故に激情を好まれ、勝利そのものとは別の恵みを下さるのです」


 紳士とか支配人っぽいけどやっぱり神官だなー、という感じの話を聞きながら向かった先には、まずカウンターがあり、その向こうにずらりと扉が並んでいた。ん?

 ……さらに続いた説明によると、神直営というだけあって景品は貴重なものが多い。なので誰が何を交換したかは秘密となるように、ここで個室に移動してから交換する事になるようだ。

 またお客の立場や地位と言ったものを考慮し、絶対に鉢合わせないようにあれこれを絶妙に調節しているらしい。え、もしかしてあの扉の向こう、全部このカウンターで通常空間と接続するタイミングを操作できる時と精神の部屋的なあれなのか。


「ふーん。……エルルリージェ、どうする?」

「ここでお嬢と離れる訳にもいかないが、扉の前で立ってるっていうのもダメそうだな」


 私もまぁ不可能ではないだろうなと思ったけど、信用がないなー、“偶然にして運命”の神。

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