第1256話 42枚目:攻略指針

 恐らく、このイベント最後となるだろう高難易度の空間異常について「第一候補」が情報を共有してくれた訳だが、問題はそれにどうやって対処するかなんだよな。“歪”めるの影響を受けたカジノと、“溶”かすの影響を受けた図書街。正直どうなっているのかさっぱり予想がつかない。


『そもそも、空間の歪みを利用した、とはいえ、神の眷属が単独行動している時点でおかしいのであるがな。それもモンスターばかりがいる、閉じた空間の中に、というのは』

『それはそうよねぇ~。その辺は何か聞けたのかしら~?』

『残念ながら、意思疎通は非常に難しい状態である。そも、どの神の眷属かというのが確定したのも、消去法である故な』

『あの格好のまま、って時点で何か不具合というか、何か面倒な事になっているのは確定的に明らかってやつでしょうしね』

『いかにも仮装、という姿じゃの。あれから変わったりはせんのか?』

『今のところあのままであるな』


 という事で、確定した情報はそれぐらいのようだった。どうやら「第一候補」はあのシーツおばけみたいな「何か」こと神の眷属にアプローチを続けるらしく、それに必要な儀式用の道具を取りに戻って来ていたらしい。

 その会話が終わった時点で私は一旦ログアウト。そろそろ連続ログイン時間の上限が迫ってたからね。お昼だからリアルでお腹減ったっていうのもあるけど。

 しかし、図書街にカジノか。……どっちも、人によっては入り浸って出てこなくなる場所だな。そしてサブクエストの宝庫だろうな。下手をすればメインクエストが進まなくなるレベルの。


「……まぁ、今でも他の場所で、メインをスルーして活動してる召喚者プレイヤーは一定数いるし……」


 対『バッドエンド』とか、不測の事態の備えとしては生きているし、掲示板を見る限りちょこちょこ細かいところでフラグを立てるのは全体が有利になっているらしいので、無駄ではない。ちょっと、いいなー、とは思うけど。だって絶対楽しいだろうし。

 まぁ、ともかく。残る場所がどこかなのかが分かれば、場所は特定できる。何故なら地図はあるからね。それにほとんどの町や村が通常空間に戻っているなら、聞き込みという形でも情報は集められる。

 だから場所の特定と、その周辺警戒はスムーズに行く筈だ。情報が伝われば、司令部も本腰を入れるだろうし。


「だから問題は、開始のタイミングだよなぁ……」


 最初の高難易度な空間異常の時は、3日と半日だった。そこから半日ずつ制限時間は伸びているので、順当に行けば次は内部時間で5日が制限時間となる筈だ。

 チェーンクエスト風に進んでいくにつれて、制限時間以上に難易度が上がっていっている。となると、出来るだけ多くの召喚者プレイヤーが一度に動けるタイミングの方がいい筈だ。

 しかし内部時間で5日か。リアル36時間。……ちょっと厳しいんじゃないだろうか。


「かといって、時間加速は3日分しかないし」


 そんな事を思いつつお昼ご飯を食べ終え、再ログインの前に外部掲示板を軽く巡って情報収集。……流石にこのタイミングであの最新情報は出てこないか。という事でログイン。

 あんまり間は空けてないが、それでも一応クランメンバー専用掲示板と、司令部が更新する掲示板を確認する。情報さえ伝われば司令部の動きは早いし、「第一候補」はログインを続けていたようだから。内部時間はリアルの4倍なので、動きがあってもおかしくない。


「……流石司令部ですね」


 現在は土曜日の昼過ぎだ。1月はあと半分ほど残っていて、明日の夜を合わせると時間加速がある日曜日はあと3回ある。それでも最後の1回まで使い切るのはどうかって事で、出来るだけ攻略は早回しして来た訳だ。

 そして司令部が更新する掲示板のトップに、結構大きな文字で新しい文言が追加されていた。


『来週日曜日、午前9時より、イベント攻略に置いて大きな動きがあります。可能であれば予定の調節をよろしくお願いいたします』


 午前9時。時間加速の丁度12時間前だ。リアル12時間は内部時間で2日に相当するので……。


「時間加速の前から空間異常に突入していても、時間が残っていれば加速状態で攻略できるんですね……」


 これなら確かに、一番無駄なく制限時間を使い切れるな。

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