第1233話 41枚目:問題点

 ある意味、空間的に薄皮一枚被せられた状態だった、という事が分かった訳だが、実はまだ話は終わっていない。

 もちろん何かある事が分かればそれを調べるのが司令部であり検証班なので、「影」を作って被せられた薄皮を剥がし、この集落における「本来の状態」の調査を進めていったらしい。

 どの方向にどんな大きさの「影」を作っても惨事が広がっている、という状況である事が分かり、一部召喚者プレイヤーは集落にいられなくなってしまったようだが、まぁ仕方ないだろう。


「普通に歩いていた場所が、どこもかしこも地獄かという程血にまみれてたと分かればそりゃまぁ……」


 しかも形が人と同じだからなー……。ダメな人はダメだろう。無理をしてもいい事は無いので、素直に下がってほしい。

 で、だな。相変わらずの運営というか、もうこれはフリアドクオリティなのか? と言いたいほど、そろそろいつもの事になりつつある、その事自体も頭が痛いんだが……死んで、ない、らしいんだ。

 薄皮一枚の、偽装というか、空間のずれというか。それがこの空間異常そのものとはまた別口の封印扱いになってるみたいで、こっちからも手を出せない代わりに、一応治療可能な状態のまま、なんだって。


「そして霧になる能力持ちの吸血鬼は、日光を浴びるとほぼ即死する代わり、日光以外だとまず死ぬことが無い、という、吸血鬼の中でもダントツに死ににくい特徴がある……」


 だからさ。

 助けられる状態だから大丈夫、じゃ、ないんだよ、と……!!!


「ミラちゃんに対する推測出来る限りのあれこれは別として、そういう事じゃないんですよねぇ……!」


 これは確かに、止めろ……! ってなるよな。と、外部掲示板の書き込みに全面同意するしかない訳だが、ここで問題が発生した。何の事かというと、どうやらその空間的な薄皮、あるいは状況固定式の封印、これは、“夜天にして闇主”の神の「正しい」力なんだそうだ。

 で、この集落で行われていたお祭りという形の儀式は、元々神を招いて捧げものをして感謝を伝え、加護と祝福をこれからも賜れるようにお願いするものだったらしい。それがどうやら、「神の機嫌がいい時にお願い事をすれば叶えてもらえる」という話がくっついて……まぁ、リアルでいう七夕祭りみたいなものになったと。

 残されている資料から得られた情報そのままに儀式であるお祭りを再現したら、それはどこかが「間違った」状態だ。だからどこかを修正しなければならないのだが……。


「最悪の想定の1つが当たりましたね。――神を招く儀式。そこに誤りがあったのなら……一体、「何」がその場に招かれたのか」


 控えめに言ってアウトなんだよな。それは、それだけはやっちゃいけないってやつだ。召喚型の儀式でミスするとかどう頑張ってもアウトである。しかも元が神って存在なのだから、間違っていても似たような強さの「何か」が喚びだされる可能性は高い。

 その「何か」を、最低でも撃退か送還する必要がある訳だ。まだどんなやつか、どこにいるのか、どうすればいいのかも分かってないけど。


「なお、かつ。さらに話がややこしいのが……儀式を「間違ったまま」繰り返したところで、「新しいやつ」が来る可能性もありますし。また、儀式を「修正して」実行したところで……肝心の神は、影響を受けている状態だ、という事ですが」


 もちろん、儀式を「間違ったまま」繰り返すことで、既に喚び出されている「何か」が出てきて叩けるようになる、のならいい。何も問題はない。少々厄介な特性があったところで、例えば相手からは触れられるがこっちからは触れないとかでもまぁ何とかなる。たぶん。正しい対処方法が分かるまで耐久戦をするのは得意だ。

 ただ、そうじゃない可能性の方が高くて、しかも大体の場合問題が解決しないどころか悪化、敵が増えたりして最終的に解決するまでの難易度が上がるからな。

 そしてもう一点。現在は金曜日の午後であり、この空間異常の時間制限は確か、明日の午前1時までだった筈だ。昨日の夜7時からリアル30時間の筈だから。


「そしてあの空間的な薄皮を剥がすときに昼間だと、そのままこの集落の皆さんが全滅してしまう。よって儀式を動かすとするなら深夜でなければならない。かつ、私は、午後6時前後のログインはまず不可能……」


 ……。

 …………。

 あれ。これ、軽く詰んでるというか、かなり追い詰められているのでは?

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