第1224話 41枚目:地下の調査

 うっかり「ヤバい」以外の語彙がどこかに逃げていきそうな光景が広がっているが、とりあえずスクショを撮ってメールに張り付け、カバーさんに送信する。情報共有は大事だ。割とすでに大惨事だが。

 私がそういう事をしながらシャッターを全部開けたランタンを掲げて明かり役になっている間に、エルルとルディルはそれぞれにこの広い空間を調べてくれている。まぁ、護衛と護衛対象ならこれが正しい形なんだけど。

 空間自体は広いが、出入り口はこの小さな通路だけのようだ。他にも何とでも使えそうな感じがするが、真ん中に固定……固定? された檻と、その周りに無造作に置いてある、もしくは散らばっている物騒な道具のせいでヤバい現場以外の印象が出てこない。


「しかし、闇属性だから邪神なんて安直さは、少なくともフリアドには無い筈ですが……」


 邪神で何の違和感もないんだよな。流石にここが邪神信仰の隠れ里だった、とかいうオチじゃないだろうな? という気もしてくる。

 いや。まぁ。流石にそれは。うん。フリアドにおける神様、バックストーリーに出てくる神々基準の邪神は出てこないだろう。それはたぶん間違いない。というか、出てきたらダメだろう。色んな意味で。

 じゃあ何の神様なのかっていうのはさっぱり分からないが、少なくとも特殊な種族ではあるっていうのはほぼ確定している。だから、かなり特殊な、それこそ一般人間種族には全く馴染みが無かったり……邪神と混同される感じの神様っていう可能性が……。


「…………。ともかく、やっぱり調べるとしたらあの檻ですよね。2人とも、どんな感じですかー?」

「血のにおいがすごかったから見ただけじゃ分からなかったが、使われてる道具に随分偏りがあるな。固定されてる大掛かりな奴はほぼ使われてない。手で持てるやつも、大型な程ほとんど汚れてない感じだ」

「飛び散って染み込んでる血はぁ、一番新しい奴以外は、かなり古いものだねぇ。血の量自体は思ったより少なかったしぃ……蓄積がすごいっていうより、一切掃除をしてない上に密閉空間だから、このにおいになってたみたいだよぉ」


 何となく2人が部屋を一周した感じがしたので声をかけると、そんな返事が来た。おや、それは何というか、


「……思ったより平和な感じでしょうか?」

「まぁ……血の汚れを洗わないって時点でどうかと思うが、少なくともこの黒い色が全部血の跡、とかいう事は無いな」

「掃除するにしても、ここまでの通路が通路だったからぁ、換気は流石に難しいかもしれないけどねぇ。結局どんな儀式だったのか、っていう手掛かりはほとんどなかったしぃ」

「え? この位置この状況で儀式との関連性無しですか?」

「残念ながら、無くはないぐらいだと思うぞ」


 ここに来て儀式の痕跡もしくはヒントなしってマジか。明後日の方向に予想外だな。となると、どこを探せばいいんだ?

 ……いやまぁ、あそこだな。あそこっていうか、あれだな。


「ところで、エルル。あの檻の中って確認しました?」

「見て無い。というか、檻の中に闇が詰まってる感じで全く見えない」

「ルディル?」

「同じくだねぇ。マスターのランタンを近づけるぐらいしかないんじゃないかなぁ? 光属性の魔法をここで使うのは、流石に何が起こるか分からないしぃ」


 だから後回しにしたともいう。けど他に無いなら調べるしかないな。明らかにあの檻がこの空間のメインだし。

 それに、光属性の魔法はダメでも宿光石のランタンならセーフかも知れない、というのは、検証班の人達が検証してくれたデータでもある。何が違うんだろうね? 影が出来ないっていうのはやっぱり属性的に特別なんだろうか。それとも魔法と魔道具では何か違うとか?


「正確に言えばこれも光属性ではあるんですけどね」

「……まぁ、他よりマシだろ。対闇の派生属性って意味だと」

「あ、闇属性じゃないのは確定なんですね」

「混ざっててそれだけじゃないっていうのが正しい感じだな。何がどう混ざってるのかは分からんが」


 まぁでも、他に手段は無いよなぁ……。

 ……ランタンで試して出力が足りない感じだったら、あのサーチライト持ってきてもらうか。あれも基本は宿光石の光だし。

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